第218回 「実はね」と言われたときに思い出す詩
「実はね」
それは、心の垣根を越えて、二人だけが分かり合える世界に入るための合言葉。
本当の思いは心の奥底にあって、言葉で伝えづらく理解されにくい。それを分かってもらうためには、心の扉を開けて、「実はね」って言わなきゃいけないんですよね。
この「実はね」にたどり着くまでが、パイレーツ・オブ・カリビアン的に描かれた詩を思い出しました。どういうことか、まあ読んでみてください。
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Understanding
Sara Teasdale
I understood the rest too well,
And all their thoughts have come to be
Clear as grey sea-weed in the swell
Of a sunny shallow sea.
But you I never understood,
Your spirit’s secret hides like gold
Sunk in a Spanish galleon
Ages ago in waters cold.
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理解
サラ・ティーズデイル
他の人のことなんてよく分かっているよ
みんなが考えていることなんて
波間の海藻みたいにはっきり見える
晴れた日の海の波間にね
でも君のことは分からないよ
君の心の秘密はまるで黄金みたい
沈没船とともに海に沈んだ黄金
大昔に沈んだ冷たい海の底にね
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他の人のことは手に取るように分かるのに、そばにいる君のことは分からない。君が本当に思っていること、それは沈没船と一緒に海に沈んだ黄金の財宝みたい。
どうですか!海に沈んだ黄金の財宝って、パイレーツ・オブ・カリビアンじゃないですか!
I understood the rest too well,
And all their thoughts have come to be
Clear as grey sea-weed in the swell
Of a sunny shallow sea.
他の人のことなんてよく分かっているよ
みんなが考えていることなんて
波間の海藻みたいにはっきり見える
晴れた日の海の波間にね
海藻は海藻でも、海の浅瀬に揺れる海藻。足元の浅瀬を覗き込めば、キラキラ光る波間にすぐに見つかる海藻。
他の人の考えていることなんて、手に取るように分かるのだと。浅いところだけ見ていれば理解した気持ちになれるのだと。
でも、もし目の前の人が、大切な人だったり、自分の心に大きなインパクトを与えてくれる人だったら、どうでしょう。
But you I never understood,
Your spirit’s secret hides like gold
Sunk in a Spanish galleon
Ages ago in waters cold.
でも君のことは分からないよ
君の心の秘密はまるで黄金みたい
沈没船とともに海に沈んだ黄金
大昔に沈んだ冷たい海の底にね
自分の心を揺り動かすその人の瞳をのぞき込んでみる。
その人の笑顔や憂いの表情や真剣な表情が瞳に深みを与えて、どこまでも深い海に潜るような感覚になる。その人の心の深いところにある本当の悩みや思いを知りたくなって、視線や言葉を追いかけて理解しようとする。
そんな風にして、心という深海を探索しながら、奥底に眠る黄金の財宝を突き止めようとする。
この人を悲しませているのは何なのだろうかとか、この人を突き動かしているのは何だろうかとか、そんなことを考えてしまうんですよね。
そうやって人をより深く理解しようとサーチライトで照らしながら懸命に潜っていくと、「実はね」という言葉が聴こえる。そこで語られる宝物のような言葉を、大事にすくい上げて、海面まで運んでゆく。
このプロセスって、人を理解しようという努力であり、その人の思いを大切にしようというリスペクトであり、黄金のような心に出会えた奇跡の証明なのだと思えてきます。
心の浅瀬で戯れるのも良いけれど、やっぱり深く深く潜ってみたいなと思います。
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今回の訳のポイント
詩の良さは、声に出して読んでみるとよく分かります。この詩全体を通じて、浅瀬や深海などの海というモチーフが用いられていますが、前半は海の浅瀬のイメージを音がよく伝えています。
I understood the rest too well,
And all their thoughts have come to be
Clear as grey sea-weed in the swell
Of a sunny shallow sea.
他の人のことなんてよく分かっているよ
みんなが考えていることなんて
波間の海藻みたいにはっきり見える
晴れた日の海の波間にね
ここでは、浅瀬で波が寄せては返すときの、シャーとかシューというしぶきの音が s の音で表現されています。
Of a sunny shallow sea「晴れた日の海の波間にね」に至っては、3つの単語のすべてがsで始まっているという徹底ぶりです。
海には、波のきらめきや騒がしさもあれば、深海の暗がりも静けさもあり、それって心というものを表すには美しすぎるくらいの比喩だなと思います。
そして、本当の気持ちは財宝として底に眠っているので、ときには海賊の大胆さで、またあるときには深海探査船の慎重さで、人の心という深い海を潜らなければいけませんね。
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