第213回 たんぽぽを見つけたときに思い出す詩
春と言えば、たんぽぽ。たんぽぽと言えば、春。
道端に咲く黄色い花を見つけるたびに思い出す詩があります。
春のぽかぽか陽気の中、たんぽぽを見つけた子どもがダッシュしていく様子をイメージして読んでみてください。
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To The Dandelion
James Russell Lowell
Dear common flower, that grow’st beside the way,
Fringing the dusty road with harmless gold,
First pledge of blithesome May,
Which children pluck, and, full of pride uphold,
High-hearted buccaneers, o’erjoyed that they
An Eldorado in the grass have found,
Which not the rich earth’s ample round
May match in wealth, thou art more dear to me
Than all the prouder summer-blooms may be.
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たんぽぽに
ジェームス・ラッセル・ロウエル
ありふれた花よ 道端に生え 咲く花よ
埃っぽい道を縁取るように咲く 無垢の黄金の花よ
陽気な五月の訪れを告げる花よ
子どもたちは君を摘み 得意満面に掲げる
陽気な海賊が喜びに沸くかのようだ
草むらに黄金の国を見つけたのだから
豊饒な大自然には敵わないかもしれないが
君こそが愛おしいんだ
誇らしげに咲き誇る夏の花よりも
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読んでいるだけで、ぽかぽかのおひさまと、道端の草むらと、そこにぽつぽつと生えるたんぽぽという、平和な春の晴れの日が思い浮かびませんか。
たんぽぽって黄色で目立つわりには、common flower「ありふれた花」で、harmless「無垢」で慎ましい感じがありますよね。
Which children pluck, and, full of pride uphold,
High-hearted buccaneers, o’erjoyed that they
An Eldorado in the grass have found,
子どもたちは君を摘み 得意満面に掲げる
陽気な海賊が喜びに沸くかのようだ
草むらに黄金の国を見つけたのだから
そんなたんぽぽを子どもは目ざとく見つけては、引っこ抜いてみたり、綿毛を飛ばしてみたり。「見て!見て!」と、集めた花を見せに来たり。
子どもにとっては、道端に群れ咲く黄色の花を見つけたというのは、「エルドラド(伝説の黄金郷)」を発見した海賊の歓喜にも等しい。
「海賊」というのが、言い得て妙だなと思います。
元気いっぱいな子どもたちが、暴力的な躍動感と破壊的な疾走感とで、春の野原で、花という花を摘み、草という草をむしり、破壊の限りを尽くして疾走していく様そのもの、、、!
そうやって、なすがままにされてしまうたんぽぽの姿が、一層愛おしくさせるというのが、たんぽぽへの愛に溢れていますね。春の日のように、なんだか心までぽかぽかしてきます。
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今回の訳のポイント
道端に咲くありふれた花、たんぽぽ。その愛おしさを描いたこの詩。
道端から黄金郷へと一気に話が飛ぶのが、なかなかのぶっ飛び具合で、詩の楽しさが爆発しているなと思います。
ひと言で言えば、「道端に咲くただのたんぽぽを、子どもたちがはしゃぎまわって引っこ抜いて見せに来る」ということなのですが、駆け寄ってくるときや、花を引っこ抜くときの子どものスピード感といいパワーといい、海賊も真っ青ですよね。
単語としてポイントとなるのは、harmlessです。こうした子どもの「無邪気さ」と、ただそこに咲くという「無垢」のたんぽぽ。たった一つの単語で、そのどちらもイメージできるという、気の利いた言葉選びが素敵です。
こうして、詩の素敵なところを取ってつけたように主張してみたのですが、道端に咲くたんぽぽを暴力的に引っこ抜く子どもの大胆さと奔放さのイメージが強すぎて、笑わずには読めないんです。誰か助けてください!
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