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第212回 春のような人に出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

春のような人、いますよね。

春の穏やかな日のように、その人がいるだけで心が晴れ晴れして温かい気持ちになる。

心のもやもやも自信の無さも吹き飛ばしてくれる。そんな春のような人に出会ったときに思い出す詩があります。

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Primavera Mia
Sara Teasdale

As kings, seeing their lives about to pass,
Take off the heavy ermine and the crown,
So had the trees that autumn-time laid down
Their golden garments on the dying grass,
When I, who watched the seasons in the glass
Of my own thoughts, saw all the autumn’s brown
Leap into life and wear a sunny gown
Of leafage fresh as happy April has.
Great spring came singing upward from the south;
For in my heart, far carried on the wind,
Your words like winged seeds took root and grew,
And all the world caught music from your mouth;
I saw the light as one who had been blind,
And knew my sun and song and spring were you.

*****

わたしの春
サラ・ティーズデイル

王様だったら 移り変わる日々とともに
毛皮も王冠も脱いでゆく
秋の木々が脱ぎ去っていった
枯れ葉の上の黄金の衣
ゆき過ぎる季節を自分なりに見てきたけど
秋色の茶は様変わりして
生命力が宿って 晴れ渡った日の青葉を纏う
幸福な四月のような瑞々しさを纏う
素敵な とても素敵な春が 歌いながら南からやって来た
わたしの心には 風に運ばれた
君の言葉が 翼のある種のように舞い降りて根づき芽吹いた
君の口が発する音楽のような言葉は みんなの耳をとらえる
まるで真っ暗闇にいた人かのように光を見つけたわたしは
気づいたの
わたしの太陽
わたしの歌
わたしの春は
君なんだって

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これは、春ですねえ。

When I, who watched the seasons in the glass
Of my own thoughts, saw all the autumn’s brown
Leap into life and wear a sunny gown
Of leafage fresh as happy April has.
ゆき過ぎる季節を自分なりに見てきたけど
秋色の茶は様変わりして
生命力が宿って 晴れ渡った日の青葉を纏う
幸福な四月のような瑞々しさを纏う

「生命力」というのが、春のような人の特徴ですよね。

その場の雰囲気や人に、生命力を吹き込んでくれる。枯れ葉みたいだった心を、瑞々しい青葉に変えてくれる。春のような人って、嫌だなあとか面倒だなあと思ってことすらも、やってみたいとか楽しいという気持ちに変えてくれるんですよね。

曇り空だった心が、澄みわたる青空になる。そんな魔法を知っているのが、春のような人。

Great spring came singing upward from the south;
For in my heart, far carried on the wind,
Your words like winged seeds took root and grew,
素敵な とても素敵な春が 歌いながら南からやって来た
わたしの心には 風に運ばれた
君の言葉が 翼のある種のように舞い降りて根づき芽吹いた

春のような人は、南の国の暖かな風のように、春の精のように、歌いながら踊りながら、草木を芽吹かせ、花を咲かせにやって来る。その言葉は、やさしくてあたたかくて、聴き心地の良い音楽のように、心に響くもの。苦難や困難を前にして、生命力を失いかけていた自分の冷たい心を温めて、また鼓動できるようにしてくれる。

しゃべると歌っているみたいで、歩いていればスキップしてるみたいで、一緒の空間にいるだけで何だかこちらまで元気になる。そんな風にして心に爽やかな風を心に吹かせてくれるのが、春のような人。

And knew my sun and song and spring were you.
気づいたの
わたしの太陽
わたしの歌
わたしの春は
君なんだって

まあ、つまり、大好きなその人は、太陽で、歌で、春なんだということなんですが、そうやって心を動かしてくれるから、好きになってしまうんですよね。英語では通常 and をいくつも使うことはないんですが、and を繰り返すことで、何だか舌足らずな、言葉よりも気持ちが先走ってしまうような、春爛漫な気持ちを感じ取ることができて、読んでいるこちらまでニコニコしてしまいますね。

*****

今回の訳のポイント

春爛漫といった趣のこの詩。まず、タイトルがイタリア語なのがエキゾチックで、それだけで、南からやって来る新しい季節のワクワク感があります。

そして、散りばめられた春らしい言葉の数々にウキウキしてきませんか。

Leap into life「生命力が宿って」や、wear a sunny gown「晴れ渡った日の青葉を纏う」という青葉は、Of leafage fresh as happy April has「幸福な四月のような瑞々しさを纏う」という徹底ぶり。

季節を「纏う」という表現に加えて、さらに春の妖精のような擬人化にも彩られています。

Great spring came singing upward from the south;
素敵な とても素敵な春が 歌いながら南からやって来た

これは、横笛を吹きながらスキップでやって来る、春の妖精に間違いないですね。

そんな春を形容する単語が Great なわけですが、もちろん「偉大な」なんて訳してしまったら、可愛らしい春の妖精が、まるで偉大な魔王のように思えてしまって台無しに。

とにかくすごいということを言いたいわけですが、じゃあ、どうすればいいのか。

そう!ただの春じゃなくて、素敵な春、それはそれはとても素敵な春って、繰り返して強調すればいいのではないかと!

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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