第210回 虹を見たときに思い出す詩
虹を見ると、心躍りますよね。
あっ!今から紹介する詩の内容を言ってしまいました!
なぜなら、「ぼくの心は躍る 空に虹を見たとき」で始まる詩で、って、もう詩の内容ほぼ全部じゃないか!
まあ、焦らず、読んでみてください。
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The Rainbow
William Wordsworth
My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
So was it when my life began;
So is it now I am a man;
So be it when I shall grow old,
Or let me die!
The Child is father of the Man;
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.
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虹
ウィリアム・ワーズワース
ぼくの心は躍る
空に虹を見たとき
幼いころもそうだったし
大人になった今もそうだ
年老いてもそうあろう
でなければ生きてる意味なんてない!
子どもというのは大人の父親なんだ
願わくば ぼくのこれからの日々が
自然への愛に貫かれていればと思う
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読めば読むほど、心躍りますねえ。
My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
ぼくの心は躍る
空に虹を見たとき
この素朴で真っすぐなひと言だからこそ、インパクトがありますよね。
So was it when my life began;
So is it now I am a man;
So be it when I shall grow old,
Or let me die!
The Child is father of the Man;
幼いころもそうだったし
大人になった今もそうだ
年老いてもそうあろう
でなければ生きてる意味なんてない!
子どもというのは大人の父親なんだ
素朴で真っすぐなのは、心も同じで、これまでもこれからもそうだ!という宣言が、また心に響きます。
人間誰しも、かつては子どもだったわけで、大人になるにつれて知識は身に着けますが、物事を真っすぐに受け止めることをいつの間にか忘れてしまうものです。
混じりけのない、子どもの心で周りを見ることができたら、大人だって多くを知り学べるだろうと思います。
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と、ここまで素朴な受け止め方をして、この詩を読んできましたが、実は、そんなに単純じゃないんです!
そもそも「虹」は、聖書においてかなり重要な役割を果たしています。
創世記9章12-17節で、虹は雲の中に置かれて、地上の人間と天上の神とを結び、それは人間と神の契約の象徴である、とされています。
それを踏まえると、単に、虹が見えたからうれしい!という意味だけではなく、神との結びつきを思い出させてくれるというニュアンスになってきます。
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.
願わくば ぼくのこれからの日々が
自然への愛に貫かれていればと思う
とすると、 pietyという言葉は、「敬愛」や「畏敬の念」を表していて、単に、美しい自然が素晴らしいというだけでなく、天地創造の神への畏敬の念というものに近いと言えます。
この詩は、英語で書かれた詩として、歴史上最も有名な詩と呼べるほどの知名度を誇っています。イギリスの田舎のなだらかな丘と湖水の風景のイメージと、キリスト教の文化的背景とがあって、人々の心にすっと入ってくるのでしょうね。
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今回の訳のポイント
この詩が愛される理由である、最初のひと言。やっぱり、良いですよねえ。
My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky:
ぼくの心は躍る
空に虹を見たとき
作者のウィリアム・ワーズワースは、イギリスの湖水地方という、丘と湖の多い風光明媚な土地で、妻と妹と三人暮らしをしながら、詩作を続けました。
そして、個人的に大好きな本ベスト5に入るのが、ワーズワースの妹ドロシーが残した日記です。
いついつに誰だれに会いに行ったとか、何を食べたとか、何を話したとか、晴れだとか雨だとか、眠いだとか頭が痛いだとか、そういうことが文字通り日記として、ときには仔細に、ときには簡潔に綴られています。
丘と湖の暮らしなので、素朴この上なく、たいてい丘をどこまでも歩いて、友だちの詩人に会いに行ったりしているのですが、そういった200年前の暮らしが、とっても身近に感じられて、200年前の今日、兄妹は何をしていたのかなとページをめくるたびに、感動します。
ちなみに、この詩が書かれた日のことも、日記にちゃんと書かれているんです!
1802年3月26日の日記では、お茶をしたあと知人に会いに行ったりするのですが、ドロシーは調子が悪かった1日で、次の1文で締めくくられています。
While I was getting into bed he wrote the Rainbow.
私が寝るころ、ウィリアムは『虹』の詩を書いた。
その詩が書かれた日のことが、本人の妹の手で書き残されていて、それを200年後に読むことができるなんて!本って、素晴らしいですねえ!
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