ENGLISH LEARNING

第204回 アーティスティックなひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

アーティスティックなひと、いますよね。

独自の感性をもち、職人肌で自身のプロジェクトに没頭する一方で、人とのつながりやコラボレーションによって、新しいものを創造する。

そんなひとに出会うと、二月の黄昏を描いた詩を思い出します。アーティスティックであることと二月の黄昏に、どんな関係があるのか。まあ、読んでみてください。

*****

February Twilight
Sara Teasdale

I stood beside a hill
Smooth with new-laid snow,
A single star looked out
From the cold evening glow.

There was no other creature
That saw what I could see—
I stood and watched the evening star
As long as it watched me.

*****

二月の黄昏
サラ・ティーズデイル

丘のそばに立った
積もったばかりのすべすべの雪
星がひとつ顔をのぞかせていた
凍えるような冬の黄昏の空に

生き物の姿は他になく
わたしの目に映るものを見るものはいなかった
そこに立ち 夕暮れの星を見つめた
星がわたしを見つめる間ずっと

*****

冬の雪にひとり立つという孤高の佇まいと、星を見つめながら、星に見つめられているという繋がりを求める感性。

これこそ、アーティストの真髄ではないかと思います。

I stood beside a hill
Smooth with new-laid snow,
A single star looked out
From the cold evening glow.
丘のそばに立った
積もったばかりのすべすべの雪
星がひとつ顔をのぞかせていた
凍えるような冬の黄昏の空に

Smooth with new-laid snow「積もったばかりのすべすべの雪」ということは、自分以外の誰も周りにはいない「ひとり」であるということ。

A single star looked out「星がひとつ顔をのぞかせていた」ということは、自分もひとりだけど星もひとり輝いているという「ひとり」の佇まいのこと。

それが絵画であれ音楽であれ、または仕事の中で見せる独自の感性であれ、自分の仕事に集中するためには、「ひとり」の時間が必要なときがあるんですよね。

黄昏時に、雪の丘に出かけて行く必要はないのですが、でも、そうした時間を必要とするのがアーティストなのではないかと思います。

*****

I stood and watched the evening star
As long as it watched me.
そこに立ち 夕暮れの星を見つめた
星がわたしを見つめる間ずっと

アーティスティックな人のもう一つの特徴は、孤独を求めるのと同じくらいに繋がりを求めること。

作品やアイディアは、人の感情を掻き立てるもの。それが喜びであれ、悲しみであれ、そこには掻き立てられる感情があって、広い意味では、その作品を通じて、共感するということ。

自分が感じていることを作品や仕事として表現する。すると、それに反応する人がいる。ある人のことを想って作り上げたものは、同じような境遇の人たちが分かち合えるものになる。そうやって、感情を共有することで、繋がりが得られる。

こうした快感を知るからこそ、孤独と繋がりという、一見すると相反する在り方を追求してしまうんですよね。

*****

今回の訳のポイント

この詩のクライマックスである、星を見つめ、星に見つめられるという素敵な箇所にポイントがあります。

I stood and watched the evening star
As long as it watched me.
そこに立ち 夕暮れの星を見つめた
星がわたしを見つめる間ずっと

「見つめる」という言葉に相当するのは、watch。

「見る」を意味する英語の言葉はいくつかありますが、seeは「(視界に入って)見える」で、lookは「(一瞬の動きとして)見やる」ことを厳密には意味します。

それに対して、watchは「(動いているものを)見る」ので、テレビを見たりサッカーの試合を見たりするのに使われるわけです。

星は空を移動していくので、それを目で追い続ける、つまり星が動く間ずっとということになります。

で、星を見る人である自分の経験から思ってしまうんです。二月の夜にじっと星を見続けるって、ものすごく寒くて凍えてしまって、こんなロマンチックな詩を考えるどころじゃないなと思うんですが、でもやっぱり、星の輝きに吸い込まれていって、我を忘れることができる瞬間があるんだよなあと。

 

【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

END