第203回 気に食わないことがあったときに思い出す詩
「気に食わない」「嫌い」っていう気持ちを持つことってありますか。
生きていればいろいろな人や物に出会いますから、全ての人や物を好きになるのは不可能で、中には、どうしても気に食わないことも出てきてしまうわけです。
そんな負の感情に襲われそうになったときに思い出す詩があります。
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I had no time to Hate
Emily Dickinson
I had no time to Hate—
Because
The Grave would hinder Me—
And Life was not so
Ample I
Could finish—Enmity—
Nor had I time to Love—
But since
Some Industry must be—
The little Toil of Love—
I thought
Be large enough for Me—
*****
嫌っている時間なんてなかった
エミリー・ディキンソン
嫌っている時間なんてなかった
だって
お墓に入ることを考えたら無理でしょ
人生って
たっぷりあるものじゃないから
憎しみきるのも無理でしょ
愛している時間なんてなかった
たしかに
がんばらなきゃいけないでしょ
愛するのもちょっとした努力が必要でしょ
思ったの
自分にはなかなかの大仕事だなって
*****
どこまでも嫌いたいけど、人生は短いので、徹底的に憎みきるという願いが叶う前に人生は終わってしまう。
こうやって仕返しして、こうやってぎゃふんと言わせてやろうという邪悪な願いは、生きている間には実現できないよ。
この茶目っ気、最高じゃないですか!
人を嫌ったり、気に食わないなとイライラすることに時間を使うほどには、人生には時間が足りないんですよね。ただでさえ少ない貴重な時間を、そんなことに使うの無駄じゃん、と。
で、愛するほうはって言うと、こっちは大変すぎてやっぱり時間が足りない。
愛のかたちは様々で、置かれた環境も目指す幸せもそれぞれだから、それを実現するには、Some industry「相応の努力」やThe little toil of love「ちょっとした努力」が必要になる。
そんなに熱くならず自然体で目指せる愛も世の中にはあります。
しかし、この詩のように、嫌うなら徹底的に嫌ってやろうとトライするものの人生の時間切れになるとか、短い人生の中で愛という大事業に挑むっていう暑苦しさが、何だかいいなと思ってしまうんです。
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今回の訳のポイント
憎むにも愛するにも人生は短い。そんなことを考えてしまうこの詩。
詩の後半は、愛するのはけっこう大変だということを言っています。
Some Industry must be—
The little Toil of Love—
I thought
Be large enough for Me—
がんばらなきゃいけないでしょ
愛するのもちょっとした努力が必要でしょ
思ったの
自分にはなかなかの大仕事だなって
Some industry「がんばらなきゃ」Toil「努力」large enough「大仕事」って言われると、肩に力が入ってしまいますが、単に人生は短いからなんですよね。
エミリー・ディキンソンという詩人は、同じような言葉を重ねるしつこさはあまりない詩人なのですが、畳みかけてくる感じが切迫性を感じさせます。
それもこれも、気に食わないことにイライラしていられるほど人生は長くない、ということ。
自分に与えられた時間を何に使うのかということを考えさせられますね。
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