第191回 片思いしているときに思い出す詩
片思い。
想いはどんなに強くても、相手は決して振り向いてくれない。
そんな残酷な事実を言葉にしたときの破壊力!
でも、片思いだっていいんです!こんな素敵な詩があるのですから。そのタイトルは「泣く」!泣かずに最後まで読んでください!
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A Cry
Sara Teasdale
Oh, there are eyes that he can see,
And hands to make his hands rejoice,
But to my lover I must be
Only a voice.
Oh, there are breasts to bear his head,
And lips whereon his lips can lie,
But I must be till I am dead
Only a cry.
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泣く
サラ・ティーズデイル
この目を 見つめてもいいんだよ
この手を あたためてもいいんだよ
大切な君 でも君にとっては
声でしかないんだな
この胸に 顔をうずめてもいいんだよ
この唇に 君の唇を重ねてもいいんだよ
でも わたしは死ぬまでずっと
泣くしかないんだな
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これは泣くしかないですよねえ!
1行ごとに、言葉がグサグサと心に刺さり、このひとつの詩に対して、心がいくつあっても足りないですね。
Oh, there are eyes that he can see,
And hands to make his hands rejoice,
But to my lover I must be
Only a voice.
この目を 見つめてもいいんだよ
この手を あたためてもいいんだよ
大切な君 でも君にとっては
声でしかないんだな
自分のことをじっと見つめてくれることはないんだなあ。自分の手を握ってくれることはないんだなあ。
これは辛いですねえ。
君にとって、自分は見つめる相手でも、手を握る相手でもない。ただ、空気を震わせて空間を超えて耳に届く音でしかないんだなあ。
でも、それでも良いんですよね。
声が届く距離にその人はいて、同じ時を過ごしている。その人の素敵な物腰や、やさしい話し声や、明るい笑い声だけで、自分は幸せな気持ちになるから。
Oh, there are breasts to bear his head,
And lips whereon his lips can lie,
But I must be till I am dead
Only a cry.
この胸に 顔をうずめてもいいんだよ
この唇に 君の唇を重ねてもいいんだよ
でも わたしは死ぬまでずっと
泣くしかないんだな
でも、結局のところ、良くても、話をする相手にしかなれないんだという事実を噛みしめるしかない。
これは辛いですねえ。
自分をこんなに幸せな気持ちにしてくれるのに、君を幸せにするのは自分ではないんだなあ。こんなに自分を幸せにしてくれる人だから、今度は自分が幸せにしてあげたいなあ。そのチャンスはないみたいだけど。
でも、それで良いんですよね。
人を想うことで、生活の中で幸せを感じるパワーが上がるから。自分のことなんかよりも、誰か他の人の幸せを強く願う。そんな無限のやさしさを、自分の心の中に育ててくれるから。
でも、やっぱり、涙がこぼれてしまうんですよね。
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今回の訳のポイント
この詩の最大のポイントは、そのタイトルです。
A Cry
泣く
「泣く」って言うけど、英語のタイトルの方は、名詞じゃないか!というツッコミは甘んじて受け入れます。
まず、Cry という名詞の意味は、「泣くこと」と「叫び」があって、タイトルを見た段階では判断できず、叫ぶのかな、泣くのかなと、意地悪な期待をして詩を読みます。
最後まで読んでみて、片思いの切なさにこぼれるのは、やっぱり涙だなと思います。
そのうえで、「泣くこと」としてしまうと、何だか変に意味ありげになりますし、「こと」の二文字分だけ、目が言葉を認識してから、心に届くまで時差が発生する気がするんです。
涙は気づいたら、こぼれて頬を伝っているもの。
届かない人のことを思って心が震える。涙がこぼれる。この伝達回路のスピードを考えたら、「泣く」でいいのではないかと思います!
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