第183回 眠れない夜に思い出す詩
暑くて眠れない夏の夜が過ぎると、秋が来て、秋の虫が騒ぎ出します。
結局、秋の夜も眠れないじゃないか。そう思ったときに思い出す詩があります。
耳にこびりついて離れない秋の虫の鳴き声をイメージしながら読んでみてください。
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Nuit Blanche
Amy Lowell
The chirping of crickets in the night
Is intermittent,
Like the twinkling of stars.
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眠れない夜に
エイミー・ロウエル
夜 こおろぎが鳴く
止むこともなく
空の星は 瞬く
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たった3行に秋の夜が凝縮されていますね。
詩人エイミー・ロウエルは、俳句的な雰囲気を英語の詩でも追求した詩人のひとりで、3行だけだからこその雰囲気がありますよね。
こおろぎという言葉を聞いただけで、いつまでも耳に残るあのジージーという鳴き声が、聞こえて来そうです。
一瞬止んだかと思うと、やっぱりまた鳴き始める。そうやって、止むことなく一晩中鳴き声がする。
それは星の瞬きも同じです。
実際には、温度などによる大気の屈折率の変化で、瞬いているように見えるだけなのですが、星も眠れずにいるのかななんてロマンチックに考えたくなってしまったりします。
その意味で、大事なのが、この詩のタイトルです。
Nuit Blanche
眠れない夜
フランス語ですが、直訳すると「白い夜」つまり「白夜」になります。しかし、フランス語の慣用句としては、「白い」=「実体がない」=「眠れない夜」となります。
確かに、本来、眠るべき夜に眠れていないのなら、夜という実体を成していないことになりますよね。
そうやって、一晩中、他のみんなも眠れない夜過ごしているのかなと。それを伝えるには、こおろぎの声と星の瞬き2つだけ、文章にするなら3行の詩だけで十分なんですよね。
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今回の訳のポイント
詩の翻訳でいつも直面する問題があって、この詩でもそれが問題になっています。
それは、「〜のように」問題です。
詩は、比喩を多用するので、どうしてもlike「〜のように」が頻出してしまいます。毎回「ように」とするのもなあと、いつも思ってしまうんです。
この詩でも、「こおろぎの鳴き声」は「瞬く星」のように「止むことがない」のですが、単調な「ように」を回避する名案を思いついてしまいました。
3行から成る詩なので、そのまま「止むこともなく」を真ん中に置けば、「こおろぎが鳴く」+「止むこともなく」とも、「星は瞬く」+「止むこともなく」とも、どちらにもつながるのではないかと!
で、また考えてしまうんです。
前半は「こおろぎが鳴く」で「が」、後半は「星は瞬く」は「は」で、「これは対比を表す『は』で、、、」から永遠に続く、日本語の「は」と「が」の使い分け講座のカリキュラムを!
秋もやっぱり眠れそうにないですね。
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