第181回 願いが叶わないときに思い出す詩
願い。
わたしたちは、小さなものから大きなものまで、願い事をして日々生きています。
しかし、願う気持ちの強さにもかかわらず、運命の女神は振り向いてくれないことがあります。
そんな片思いの夢が打ち砕かれたときに思い出す詩があります。
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Many Will Love You
Mathilde Blind
Many will love you; you were made for love;
For the soft plumage of the unruffled dove
Is not so soft as your caressing eyes.
You will love many; for the winds that veer
Are not more prone to shift their compass, dear,
Than your quick fancy flies.
Many will love you; but I may not, no;
Even though your smile sets all my life aglow,
And at your fairness all my senses ache.
You will love many; but not me, my dear,
Who have no gift to give you but a tear
Sweet for your sweetness’ sake.
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たくさんの人が君のことを愛してくれるよ
マチルド・ブリンド
たくさんの人が君のことを愛してくれるよ
君は愛されるために生まれてきたから
まだ生え揃わない鳩の羽の柔らかさも
そっと触れるような君のまなざしほどじゃない
君はたくさんの人を愛するんだろうね
風は向きを変え
羅針盤の指す方を変えるかもしれないけど
君ほどじゃない だって君は自由気ままに飛ぶから
たくさんの人が君のことを愛してくれるよ
でも自分にはできないよ
君の笑顔でわたしのすべてがキラキラするとしても
君が素敵すぎて五感のすべてがズキズキするとしても
君はたくさんの人を愛するんだろうね
でも自分は違うんだよね
君にあげられる贈り物は涙しかないけど
優しい君に甘ったるい涙しか流せないけど
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片思いの詩として読むと、これはキツイですねえ。
ひと言で言うと、
君はみんなに愛されるし、みんなを愛するだろう。でも、自分はそこには含まれていないんだね。
これは、悲しすぎますねえ。
You will love many; for the winds that veer
Are not more prone to shift their compass, dear,
Than your quick fancy flies.
君はたくさんの人を愛するんだろうね
風は向きを変え
羅針盤の指す方を変えるかもしれないけど
君ほどじゃない だって君は自由気ままに飛ぶから
運命の女神は気まぐれ、と言われます。
今回はうまく行ったから次も!と願うと裏切られ、諦めかけたときに限って、なぜか棚からぼたもち。
気まぐれな人の態度や言葉に踊らされて、ひとりで勝手に喜んだり、落ち込んだり。そんな恋心の辛さと同じように、願いもすべてが叶うわけではないんですよね。
恋も願いも、「もしかしたら」の気持ちで、可能性を感じたり、やっぱり無理なのかと絶望したり。
You will love many; but not me, my dear,
Who have no gift to give you but a tear
Sweet for your sweetness’ sake.
君はたくさんの人を愛するんだろうね
でも自分は違うんだよね
君にあげられる贈り物は涙しかないけど
優しい君に甘ったるい涙しか流せないけど
で、やっぱり泣いちゃうんですよね。
無理だと分かっていたけど、本当に無理だと分かったとき。
どんなに強く想っても、どんなに強く願っても、地球はひっくり返らないので、結果は変わらない。そんな悔しさに、ひとり涙を流してしまう。
君の優しさは sweet で、自分の流す涙は同じ sweet でも、甘ったるい。
どこか甘えがあったのかな、自分の力不足は棚に上げて泣いてるだけじゃダメなのかなと考えていると、また涙が溢れるという、終わりなき無限ループ。
恋も願いも、すべては叶わない。そんな世の中の真実をこんなにも優しく甘く教えてくれると、sweet という言葉がますます好きになってしまいます。
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今回の訳のポイント
この詩の訳のポイントは、ここしかありません!
Even though your smile sets all my life aglow,
And at your fairness all my senses ache.
君の笑顔でわたしのすべてがキラキラするとしても
君が素敵すぎて五感のすべてがズキズキするとしても
うおおおー!何ですか!この奇跡の2行は!
恋する気持ちを、これ以上的確に表せないほどの言葉!地球が滅びたときに、人間には「恋」という概念があり、それはこういうものだったと伝えるべき、人類の遺産!
笑いかけてくれただけで、life「人生・生活・生命」という自分のすべてが輝くくらいに幸せになれるがする。
その顔を見るだけで、その声を聴くだけで、その匂いや温もりを感じるだけで、自分の五感が猛烈に反応して幸せだけど、切ない気持ちにもなる。
どうしてこんなに嬉しいんだろう。自分のものにはならないと痛いほどに分かっているのに。
それでも人は、願いが叶う、想いが叶うと信じたくなってしまうんですよね。
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