第179回 嫌なことがあったときに思い出す詩
嫌なことがあったとき。
考えただけで心がもやもやしてきますよね。気持ちを切り替えたいけど切り替えられない。
そんなときに効く、甘いお薬のような詩があるのを思い出しました。
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New Every Morning
Susan Coolidge
Every day is a fresh beginning;
Listen, my soul, to the glad refrain,
And, spite of old sorrow and older sinning,
And puzzles forecasted and possible pain,
Take heart with the day, and begin again.
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毎朝が新しい朝
スーザン・クーリッジ
毎日が新たなスタートだよ
耳をすませば 心に聞こえるよ 楽しい思い出も
嫌な思い出も あの日の悲しみも ずっと昔の過ちも
いろいろ悩むだろうし きっと苦しいときもある
新しい一日を思い切り受け止めて
また始めてみて
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こ、こ、これは甘い!人生そんな甘くないだろー!というツッコミが入りそうな、甘い励ましソング!あ、いや、詩ですね。
まず、一行目から、いきなり甘々ですよね。
Every day is a fresh beginning;
毎日が新たなスタートだよ
「毎日が新たなスタートだよ」って、そんなこと知っとるわ、ボケー!と、のっけから壮大に突っ込まざるを得ない、ベタなひと言。でも、そのひと言こそがほしい時があるんですよね。そうしないと、ずっともやもやを抱え続けてしまいそうになる。今日は今日で、明日は明日と思えたら、気持ちも楽になるものです。
Listen, my soul, to the glad refrain,
And, spite of old sorrow and older sinning,
And puzzles forecasted and possible pain,
耳をすませば 心に聞こえるよ 楽しい思い出も
嫌な思い出も あの日の悲しみも ずっと昔の過ちも
いろいろ悩むだろうし きっと苦しいときもある
頭では理解していても、心は整理がつかずに、記憶の墓場をほじくり返して、メソメソと泣く。あのときもああだったなとか、こうすればよかったとか。
人間には2種類いて、いい思い出だけを覚えている人と、嫌な思い出だけを覚えている人がいます。
ふとした瞬間に思い出すのは、過去の悲しみや過ち。なぜか嫌な思い出だけが頭によぎり、心を苦しませる。そんな風にして、心のかさぶたをほじくるのが好きな人。
過去を振り返るだけならまだしも、先々の心配や苦労まで考え出すと、救いようのない泥沼から抜け出せなくなってしまいそうです。
Take heart with the day, and begin again.
新しい一日を思い切り受け止めて
また始めてみて
でも、考えてみると、まだ見ぬ明日には、誰か新しい人や何か新しい考えに出会う可能性だってあるわけです。今日という日に思い悩んでいることが、明日にはたいしたことではなくなるかもしれない。
明日になれば嫌なことも忘れられる、ということではなくて、明日という新しい一日がもたらしてくれるものがある。そう思えれば、また始められそうな気がしてきませんか。
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今回の訳のポイント
実はこの詩は、本来もっと長い19世紀の詩なのですが、そのシンプルで分かりやすいメッセージから、最後の5行が紹介されることが多いんです。
過ぎ去った日は帰って来ないし、自分が生きていくのは明日なのだから、新しい朝を新しい気持ちで迎えよう。このメッセージは、間違いのない心のお薬と言えますよね。
Every day is a fresh beginning;
毎日が新たなスタートだよ
訳していて笑ってしまったのが、英語の beginning「始まり」をわざわざ英語の「スタート」という言葉に訳したいという衝動に駆られたことです。サビで英語が突然登場するJ-POPの歌詞のようで、おもしろいなと。
19世紀の詩でも、J-POPの歌詞のような雰囲気で口ずさめたら、それはそれで心に真っすぐに届けられる。そして思うんです。今も昔も、人っていつも悩んでいるんだなと。
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