第172回 男の絆を感じるときに思い出す詩
男の絆。
それは、弱い己を知る者同士に芽生える、熱き連帯感。
弱さとは、腕力や経験や能力や、ずっと喉に引っかかった人生の痛み。
それでも、己の生き方をそれぞれに貫こう!と盛り上がったときに思い出す詩があります。
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To F. J. S.
Robert Louis Stevenson
I read, dear friend, in your dear face
Your life’s tale told with perfect grace;
The river of your life, I trace
Up the sun-chequered, devious bed
To the far-distant fountain-head.
Not one quick beat of your warm heart,
Nor thought that came to you apart,
Pleasure nor pity, love nor pain
Nor sorrow, has gone by in vain;
But as some lone, wood-wandering child
Brings home with him at evening mild
The thorns and flowers of all the wild,
From your whole life, O fair and true
Your flowers and thorns you bring with you!
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F. J. S.に
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
友よ 君の表情から読み取れるよ
美しき君の人生の物語が
君の人生という川を 僕はたどり
陽の光が怪しく揺れる川底から
はるか彼方の湧き出す泉まで
君の暖かな胸の鼓動も
君の頭に浮かぶ思いも
喜びも情けなさも 愛も苦しみも
悲しみも無駄にはならないよ
ひとり森を彷徨う少年として言えるのは
穏やかな夕暮れに家にたどり着くと
野の花や棘を連れて来るものだから
君も生きてれば 君は君らしく
君の花や棘を 連れて行けばいい!
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これは、なんとも熱き男の応援歌!深く深く胸に言葉が突き刺さりますね。
冒頭の流れが、最高にかっこいいですよね。顔に浮かぶ表情だけで、その人の人生の紆余曲折に思いを馳せてあげられること。
I read, dear friend, in your dear face
Your life’s tale told with perfect grace;
The river of your life, I trace
Up the sun-chequered, devious bed
To the far-distant fountain-head.
友よ 君の表情から読み取れるよ
美しき君の人生の物語が
君の人生という川を 僕はたどり
陽の光が怪しく揺れる川底から
はるか彼方の湧き出す泉まで
今、目の前に見えてるのは、雄大に流れる川であったとしても、その前には、人生の急流があり、そのさらに前には、自信なくこぼれるチョロチョロとした流れがあり、そのはるか前には、湧き出した泉のような、始まりの物語があったんだ、と。
人の今の姿は、その人の全てでない。その人の人生の源流の物語に思いを馳せることができたら、人はお互いに対してもっと優しくなれるだろうと思います。
Not one quick beat of your warm heart,
Nor thought that came to you apart,
Pleasure nor pity, love nor pain
Nor sorrow, has gone by in vain;
君の暖かな胸の鼓動も
君の頭に浮かぶ思いも
喜びも情けなさも 愛も苦しみも
悲しみも無駄にはならないよ
気持ちのすべてに行き着く先があるわけではないし、思いのすべてに行動が伴わないこともあるし、情けなさなんて毎日感じるし、どんな愛も苦しみも悲しみも無駄にならないとわかっていても、辛いときもあるし。
でも、それを「そういうこともあるよね」と優しく受け止めて、肩でも組んで、夕陽に向かって歩けば、明日という日を迎える自信が湧いてきたりもするのです。
But as some lone, wood-wandering child
Brings home with him at evening mild
The thorns and flowers of all the wild,
From your whole life, O fair and true
Your flowers and thorns you bring with you!
ひとり森を彷徨う少年として言えるのは
穏やかな夕暮れに家にたどり着くと
野の花や棘を連れて来るものだから
君も生きてれば 君は君らしく
君の花や棘を 連れて行けばいい!
そして、迎えるフィナーレがカッコ良すぎます!
人生という旅路の中で、誰もがひとり森を彷徨ってしまうときがあります。気づいたら道を見失ってしまうこともあれば、敢えて自分の道を歩もうと森に分け入ることもある。
そして、落ち着ける自分の居場所に戻るときには、栄光の花も、棘だらけの傷も作って、帰って来るものなのです。
そんな生き様を、人は笑うかもしれません。でも、自分自身に嘘をつくことなく、自分らしく生きる様を、隣で熱く励ましてくれる友人がいたら。
そうしたら、どんな時も誇れる自分でいられる気がしてくるものなのです。
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今回の訳のポイント
個人的に、好きな詩のジャンルとして、詩人が特定の人物に宛てて書いた詩というのがあります。
この詩のタイトルも、To F. J. S.となっていて、相手の名前のイニシャルをタイトルに含めています。
手紙という私信でもなく、かと言って、独立した美的作品でもない。公開されることは想定しつつ、個人的な思いもにじみ出ている。
完璧に加工されイヤホンで聴く音楽と言うよりは、生演奏の弾き語りに耳を傾ける感覚のような、音の震えが身体に感じられるような肌感覚を得られる気がします。
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わたしたちは身近な人たちに、「ありがとう」とか「ごめん」とか「がんばって」など言葉をかけます。しかし、その短い言葉にはさまざまな思いが込められているわけで、それを必ずしも言葉にして伝えるわけではありません。
ひと言じゃ思いを伝えきれないし、かと言って、手紙じゃなんだか説明的すぎるし。何かもっと少ない言葉で、多くを感じさせるような、、、
そんな時は、詩!
書いてみませんか。
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