第171回 友だちとメッセージをしているときに思い出す詩
友だちと他愛ないメッセージのやり取りをしているときって、なぜかとても落ち着きますよね。
自分を大きく見せる必要がなく、ありのままの自分というか、等身大でいられるというか。
そんなときに思い出す詩があります。
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A Song II
Lucretia Maria Davidson
Life is but a troubled ocean,
Hope a meteor, love a flower
Which blossoms in the morning beam,
And withers with the evening hour.
Ambition is a dizzy height,
And glory, but a lightning gleam;
Fame is a bubble, dazzling bright,
Which fairest shines in fortune’s beam.
When clouds and darkness veil the skies,
And sorrow’s blast blows loud and chill,
Friendship shall like a rainbow rise,
And softly whisper — peace, be still.
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うた II
ルクレティア・マリア・ダビッドソン
人生なんて 海みたいに落ち着かないもの
希望は彗星みたいに 愛は花みたいに
朝の光を浴びて咲いたと思うと
夕方には萎れてしまう
野望なんて 高さに目が眩んでるだけ
栄光なんて 稲妻みたいな一瞬の光で
名声なんて 泡みたいにキラキラ眩しいのは
たまたまとても恵まれていただけ
雲や暗闇が空を覆ったとき
悲しみの風が冷たく激しく吹いたとき
友情は虹のように現れて
そっとささやいてくれる
大丈夫だよ 落ち着いて
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赤の他人の評価でなく、本当に自分を元気づけてくれるのって、やっぱり友情なんだよなあ。そんなことをしみじみ考えてしまいますね。
Life is but a troubled ocean,
Hope a meteor, love a flower
Which blossoms in the morning beam,
And withers with the evening hour.
人生なんて 海みたいに落ち着かないもの
希望は彗星みたいに 愛は花みたいに
朝の光を浴びて咲いたと思うと
夕方には萎れてしまう
冒頭の一行から、いきなり核心を突いてますよね。
海は、一瞬たりとも動きを止めることなく、潮も波も落ち着くことを知りません。人生も、多かれ少なかれ、常に変化にさらされて、同じ一日はひとつもありません。
そんな人生を一瞬輝かせるものは確かに存在します。
でも、希望は彗星のように一瞬で消え去りますし、愛も花を咲かせたかと思うとすぐに萎れてしまいます。野望も栄光も名声も同じで、すべて一瞬の輝きでしかないのだと。
では、そういったものと異なり、落ち着くことのない人生なかで、ずっと変わらず、そこにあるものは何でしょうか。
When clouds and darkness veil the skies,
And sorrow’s blast blows loud and chill,
Friendship shall like a rainbow rise,
And softly whisper — peace, be still.
雲や暗闇が空を覆ったとき
悲しみの風が冷たく激しく吹いたとき
友情は虹のように現れて
そっとささやいてくれる
大丈夫だよ 落ち着いて
「友情は虹のように現れて」というのがいいですよね。太陽のようにいつも明るく照らしてくれるというわけではなく、雲や暗闇や風が吹いたときに、現れてくれる。それが友情なのだと。
未来が見通せなくて不安なとき、苦しくて辛くて上を向けないとき、突然の悲しみに襲われたとき。
そんな雨風のあとに、そっと現れるのが、虹。
本当に困ってしまって、頼るものがないように思えたときに、そっと現れては、「大丈夫だよ。落ち着いて。」とささやいてくれる。
大好きな友だちの顔や声が思い浮かびませんか。
限りある人生。メッセージしたり、おしゃべりしたりするのも、人生全体からしたら大した時間にはならないかもしれません。しかし、光が当たっていない瞬間にこそ現れて、虹を架けてくれる。それは、心にどれだけの落ち着きを与えてくれることでしょう。
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今回の訳のポイント
友情を虹に喩えたこの美しい詩の最大のポイントは、最終行にあります。
Friendship shall like a rainbow rise,
And softly whisper — peace, be still.
友情は虹のように現れて
そっとささやいてくれる
大丈夫だよ 落ち着いて
「人生は常に落ち着きのない海である」というところから始まった詩の帰結は、波のように揺れる心を落ち着かせるようとする一言になっています。
Peaceという言葉をどう訳すかが大事なのですが、文字通りに、名詞の「平和」とささやかれても興ざめしてしまいます。
ふと思うのは、フランス語で名詞のSilence!と言ったときに「静粛に!静かに!」を意味するという例です。つまり、「静寂」という名詞だけで、それを促す「静かにしなさい!」を伝えているのです。
ここでも、平和とは、心の平安であり、それを促すひと言は「大丈夫だよ」なのではないかなと思います。
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