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第167回 無尽蔵のモチベーションが湧いてきたとき思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

モチベーションが、無尽蔵に湧いてきて、頭も身体も絶好調なときがあります。

いったい何に突き動かされて、行動をとるのか。

熱い気持ちがグツグツと湧いてくる、そんな瞬間のことを考えると思い出す詩があります。

*****

Voice Of The Voiceless
Ella Wheeler Wilcox

I am the Voice of the Voiceless
Through me the dumb shall speak
Till the world’s deaf ear be made to hear
The wrongs of the wordless weak.
Oh shame on the mothers of mortals
Who do not stoop to teach
The sorrow that lies in dear dumb eyes
The sorrow that has no speech.
From street, from cage, from kennel
From stable and from zoo
The wall of my tortured kin proclaims the sin
Of the mighty against the frail.
But I am my brother’s keeper
And I shall fight their fight
And speak the word for beast and bird
Till the world shall set things right.

*****

声なき声
エラ・ウィーラー・ウィルコックス

わたしは声なき声を届ける声
わたしの声を通して 黙らされた者の声を届けよう
聞く耳をもたない世の中が耳を傾けるように
言葉を発しない弱き者たちの苦しみに
命ある者たち その創造主たちよ
なぜ腰を下ろして教えようとしないのか
物言わぬ者たちの瞳に宿る悲しみを
言葉にならない悲しみを
通りで 檻で ケージで
厩舎で 動物園で
虐げられた者たちを囲う壁が
罪を物語っている
強き者が弱き者を虐げるという罪を
だがわたしはこのか弱き仲間たちを守る
わたしはなすべきことなす
獣や鳥たちの代わりに言葉を発しよう
世の中が正すまでは

*****

この詩は、虐げられた動物たちを歌っていますが、個人的には、社会の中で不利益を被っている人たちのことを思わずにいられません。そういった人たちへの思いが、モチベーションになるんです。

I am the Voice of the Voiceless
Through me the dumb shall speak
Till the world’s deaf ear be made to hear
The wrongs of the wordless weak.
わたしは声なき声を届ける声
わたしの声を通して 黙らされた者の声を届けよう
聞く耳をもたない世の中が耳を傾けるように
言葉を発しない弱き者たちの苦しみに

社会のあらゆるところで、わたしたちは「声なき声」に気がつきます。

職場で、家庭で、街角で、弱い立場に置かれた人が、声を上げられないままに、苦しんでいる。その事実に、心がチクチクしながら、見てみないふりをするのか。それとも、その声を届けるためにできることするのか。

個人的には、こうしたときに心にグツグツと湧き上がる何かに突き動かされて、生きていると感じます。

自分の個人的な目標ではなく、他の誰かが目指していることを支えるために、自分ができることを増やして、持てる力すべてを捧げたい。そう思ってしまうのです。

*****

The wall of my tortured kin proclaims the sin
Of the mighty against the frail.
罪を物語っている
強き者が弱き者を虐げるという罪を

そして、何よりもモチベーションを上げてくれるのは、「強き者が弱き者を虐げるという罪」への怒り!作者ウィルコックスは信仰と社会正義の思い熱い詩人ではありますが、これは、怒ってますねえ。

平易な言葉と明快な韻によって、親しみやすい詩をつくるのが得意な詩人にしては、あまりに直截に社会正義を歌っていることに、ドキッとします。

詩は、歌のように日常的に口ずさむものと信じていますが、こうした詩に出会うと、詩と言うのはまさに、歌謡曲から反体制ロックまで、あらゆるジャンルをカバーできるものなのだと感じます。

しかも、この詩人ウィルコックスは、ひとりでそうしたジャンルをカバーしていて、人や世の中に向ける目の広さと確かさに、尊敬の念を抱かずにいられません。

何よりも、この詩が書かれてから100年以上が経っても、こうして心に熱き炎をたぎらせてくれる。そのことに驚嘆してしまうのです。

*****

今回の訳のポイント

エラ・ウィーラー・ウィルコックスという詩人は、印象深いフレーズをもつ詩を多く発表しています。

Love does not grow on every tree「愛は すべての木に育つわけじゃない」
Laugh, and the world laughs with you「笑ってごらん 世界が一緒に笑ってくれるから」
Let no man pray that he know not sorrow「悲しみよ なくなれ そう願わないで」
Only a simple rhyme of love and sorrow「韻をちょっと踏むだけでいいの 愛と哀しみの韻を」

こうしたフレーズだけでもドキッとしますよね。

そんな彼女が社会正義を歌うこの詩は、動物虐待というトピックもさることながら、回りくどい修辞表現を使わずに、かなり直截な言葉を並べていて、思いの強さを感じさせます。

But I am my brother’s keeper
And I shall fight their fight
And speak the word for beast and bird
Till the world shall set things right.
だがわたしはこのか弱き仲間たちを守る
わたしはなすべきことなす
獣や鳥たちの代わりに言葉を発しよう
世の中が正すまでは

世の中を正すというのは大きな理想ですが、I shall fight their fight「わたしはなすべきことをなす」というように、誰かのために立ち上がるという熱き思いが、今日一日をまた生きるパワーを与えてくれると感じます。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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