ENGLISH LEARNING

第150回 おしゃべりが止まらないときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

家族や友人と話をしていて、次から次へと話が止まらないときがあります。

いつ終わるとも知れない会話が永遠に続くことになるわけですが、他愛ない会話の愛おしさを考えると、思い出す詩があります。

誰かと思いを交わし、時間を共有することの愛おしさを抱きしめて、読んでみてください。

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A Little While
Sara Teasdale

A little while when I am gone
My life will live in music after me,
As spun foam lifted and borne on
After the wave is lost in the full sea.

A while these nights and days will burn
In song with the bright frailty of foam,
Living in light before they turn
Back to the nothingness that is their home.

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すこしのあいだ
サラ・ティーズデイル

すこしのあいだ わたしはここを去る
音楽のなかで わたしは生きつづける
生まれくる海のあふれる泡のように
おおきな海に波が消えたあとも

すこしのあいだ 夜や昼は燃える
歌のなかで燃える 消えそうな泡の一瞬の輝きを放って
光のなかを生きる やがては
無に帰し あるべき場所へ帰ってゆく

*****

わたしたちの人生は、宇宙の営みからすれば、A little while「すこしのあいだ」に過ぎません。

海の波の泡が現れては消えてゆくように、わたしたち人間も生滅を繰り返す存在です。夜も昼も、一瞬で過ぎていく時間の繰り返しです。

それだけを考えると、まったく人間というのは儚く空しい存在だなと思ってしまうのですが、そうでもありません。

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今、この詩を読んでいるわたしたちは、約100年前に生きた人の言葉を、自分のことのように感じるわけで、それは言葉が生き続けている証なのです。

人はやがて無に帰すけれども、詩という音楽、歌の中に刻まれた思いが、その人が去った後も、誰かの心で生き続ける。なんて素晴らしいことなのでしょうか!

そして、ワハハと笑いながらおしゃべりをしていて、ふと思ったんです。

自分の思いや生きた証を残すために、素晴らしい歌や詩を作る必要もないんだな。だって、今こうやって話をしながら、誰かの心に自分のことが刻まれていくんだな。そう思ったんです。

*****

今回の訳のポイント

誰かに話をすると、その話はその人の心に残り、その人がまた別の誰かにそれを話せば、またその人の心に残る。自分が忘れてしまっても、自分がこの世を去っても、誰かの心に残り、永遠不滅の思い出になる。

そんな思いを抱かせてくれるのが、この詩で、宝物中の宝物のような詩なのですが、最後の一行が最高にかっこいいです。

Living in light before they turn
Back to the nothingness that is their home.
光のなかを生きる やがては
無に帰し あるべき場所へ帰ってゆく

うわっ!出た!Home!

日本語にするのがもっとも難しい英語の言葉ではないでしょうか。「家」という文字通りの意味でなく、英語でならば、見た瞬間に多くの思いが浮かぶような豊かな言葉なのですが、それを一言で表しうる日本語の単語が見当たりません。

そんなときは、頭の中の誰かと対話するに限ります!

「Homeっていうのがさ、日本語にならないんだよ」
「なんで?」
「英語なら、Homeって聞いたら思い浮かべることがいっぱいあって、日本語じゃ一言で言えないんだ」
「いっぱい、ってどんな?」
「うーん、生まれた場所で、帰る場所でもあるし、心のよりどころで、自分を取り戻せる場所、みたいな」
「へー、それってさ『あるべき場所』なんじゃない?」
「そう!それ!それだ!あるべき場所!」

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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