第148回 不思議な夢を見たときに思い出す詩
夢って不思議ですよね。
現在の同僚と子どものころの友だちが、なぜか一緒にいてしゃべっていたり。
時間も空間も越えて、夢の中の世界では不思議と辻褄が合っている。
そんな不思議な夢を見たときに思い出す詩があります。
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Only In Sleep
Sara Teasdale
Only in sleep I see their faces,
Children I played with when I was a child,
Louise comes back with her brown hair braided,
Annie with ringlets warm and wild.
Only in sleep Time is forgotten —
What may have come to them, who can know?
Yet we played last night as long ago,
And the doll-house stood at the turn of the stair.
The years had not sharpened their smooth round faces,
I met their eyes and found them mild —
Do they, too, dream of me, I wonder,
And for them am I too a child?
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夢の中でだけ
サラ・ティーズデイル
夢の中でだけ あの子たちの顔が浮かぶ
幼いころの遊び友だち
茶色い髪をした三つ編みのルイーズ
かわいくてかっこいい巻き髪のアニー
夢の中でだけ 時を忘れられる
みんながどうなったかなんて 分からない
昔みたいに 昨日の夜も一緒に遊んだ
階段の踊り場に お人形のお家はあった
歳月は あの頃のすべすべした丸い顔を
くっきりとはさせないけれど
目と目が合うと まろやかになったなと思う
あの子たちみんなも わたしに夢で会っているのかな
あの子たちにも わたしは子どものままなのかな
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どうですか!昔いつも一緒に遊んだあの子や、仲良かったあの子に会いたくなりませんか!
Louise comes back with her brown hair braided,
Annie with ringlets warm and wild.
茶色い髪をした三つ編みのルイーズ
かわいくてかっこいい巻き髪のアニー
あんなに一緒に過ごした友だちなのに、その後積み重なった記憶の層をかき分けて思い出すのは、髪型!
でも、意外と、そんなディテールだったりするんですよね。いつもこんなシャツ着ていたなとか、あんな自転車に乗っていたなとか、あんな部屋だったなとか、お母さんはこんな人だったなとか。
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Only in sleep Time is forgotten —
What may have come to them, who can know?
Yet we played last night as long ago,
And the doll-house stood at the turn of the stair.
夢の中でだけ 時を忘れられる
みんながどうなったかなんて 分からない
昔みたいに 昨日の夜も一緒に遊んだ
階段の踊り場に お人形のお家はあった
あんなに仲良くしていたのに、今どこで何をしているのかわからない。そんな友だちもいますよね。なのに、夢の中では、昨日もそのまた前の日も会っていたかのように一緒に遊んでいる。本当に不思議な感覚ですよね。
私たちは、日々何かに追われ生活をしています。アラームをセットして起きたり、炊飯器をセットしてご飯を炊いたり、いつまでに何をするかを考えて、To Doリストを作っては、一つずつ消していったり。
でも、夢の中では、時間も空間も越えて、あの日あの場所であの子と遊んだように、今の自分が生きている。支離滅裂なことも脈略ないことも、時の縛りを忘れて、今の自分があの時とつながることができる。
夢とは、脳の中でバラバラに断片化した記憶を、つなぎ直し整理する作業だと言われます。パソコンでもそうした作業が時々必要になりますが、時間の流れから自分を引き離してみることも時には必要なのです。
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Do they, too, dream of me, I wonder,
And for them am I too a child?
あの子たちみんなも わたしに夢で会っているのかな
あの子たちにも わたしは子どものままなのかな
今に縛られがちな私たちですが、夢の中では、あの頃のままでいられます。とは言っても、人の記憶って、ずいぶん勝手なもので、あの子ってこんな子だったなど思い込んでいることもありますが。
じーんとくるのは、「あの子たちみんなも わたしに夢で会っているのかな」という、一方通行な想いのほろ苦さですよね。あの子に会ってみたいような、会いたくないような、大人になった今の複雑な気持ちなどが混じって、うるうるしませんか。
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今回の訳のポイント
この詩の最大に興奮する単語は、この一文にあります。
I met their eyes and found them mild —
目と目が合うと まろやかになったなと思う
mild「まろやか」というのが、時を経て大人になったからこそ感じる思いですよね。キラキラでも、ギラギラでもない年になったからこそ味わえる感覚。
なによりも、「まろやか」という言葉のもつ語感、そのやさしさ!この日本語を生み出してくれた先人に感謝ですね。
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