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第146回 ブレないひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

一年の計は元旦にありと言いますが、年がら年中、新しいことに出会い、その度に新たにやってみたいことや新しい目標が生まれたりもします。

目標とは面白いもので、自分なりに目指しているものがあっても、人からああだこうだと言われると、それも気になってしまうものです。

しかし、決してブレずに、人生を自ら切り開いている人がいます。そんな人に出会ったときに思い出す詩があります。

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Riches I hold in light esteem
Emily Brontë

Riches I hold in light esteem
And Love I laugh to scorn
And lust of Fame was but a dream
That vanished with the morn–

And if I pray, the only prayer
That moves my lips for me
Is–”Leave the heart that now I bear
And give me liberty.”

Yes, as my swift days near their goal
‘Tis all that I implore
Through life and death, a chainless soul
With courage to endure!

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富なんてたいして気にならない
エミリー・ブロンテ

富なんてたいして気にならない
愛なんて笑わせないでほしい
名声なんて幻想にすぎない
夜明けと共に跡形も無く消え去った

もし祈りを捧げるなら それは唯ひとつ
この唇を動かす祈りは 唯ひとつ
『いま抱くこの心を離れ
自由をください』

そう 人生は刻々と終わりに近づくわけで
ひたすらに願うのは
生きても死んでも なにものにも囚われない魂
耐え忍ぶ勇気とともに!

*****

己の生き方というものへの、熱き思いが爆発していますよね。

勲章としての富も名声も愛も要らない。その代わりに自由が欲しい。

ブレない人というのは、小さな夢や目標とは別に、何か自分を貫く大きなテーマを持っていると感じます。自分はいつもこういう道を選んできたなとか、こういうことを大事にしてきたなとか、自分のあるべき姿がイメージできている人が、ブレない人だなと。

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古今東西、ブレることなく、熱き魂を貫き通した人たちがいるわけですが、そういう人の語る「目標」というものを、物語的な視点で考えると、小さな夢や目標とそれに向けた行動がプロットで、貫く生き方はテーマだと思うことがあります。

例えば、「無実の罪で投獄された男が、小さなハンマーでコツコツと穴を掘り続け、遂に脱出を果たし自由を獲得する」と言うと、それはプロット、つまり筋書きとなりますが、「不屈の精神」と言えば、テーマとなります。

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目標と言うと、何をいつまでにすると定めることになりますが、人生のプロット、筋書きというものは、まったく思い通りに行かないものです。

自分のコントロールを越えた環境の変化や天変地異に見舞われることがあって、そういったときには、何をいつまでにどうするかという算段はまったく意味をなしません。

一方で、物語におけるテーマという視点で、人生の目標を考えると、もっと広い視野で人生を見ることになります。自分が決断を下すとき、何を基準にするのか、何を大事にするのか。どこか惹かれる人って、ドタバタしているようで、芯となるテーマを内に持っている人で、他の人とは違う特別なものを感じさせるわけです。

世間一般の勲章に目もくれず、ただ自由が欲しいとつぶやくときがあれば、詩人の仲間入りを果たせるかもしれませんね。

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今回の訳のポイント

この詩の最大のポイントかつ最大のうるうるポイントは、最後のパートです。

Yes, as my swift days near their goal
‘Tis all that I implore
Through life and death, a chainless soul
With courage to endure!
そう 人生は刻々と終わりに近づくわけで
ひたすらに願うのは
生きても死んでも なにものにも囚われない魂
耐え忍ぶ勇気とともに!

人生の「終わり」を意識できてはじめて、「今」を意識できると言われますが、エミリー・ブロンテがこの詩を書きつけたのは、23才のとき。23才って!

それから7年後にはこの世を去ってしまうので、それだけ「終わり」を近くに感じ取っていたのかもしれません。短い人生を、自分らしく生きようと思うと、a chainless soul「なにものにも囚われない魂」がありさえすればいいんですよね。chainless「縛られない」というのは、物理的にも比喩的にも捉えられますが、世の中の因習であったり、人間関係であったり、信条であったり、過去であったり、計画であったり、縛るものは様々です。

それで思うんです。自分を今縛りつけているものって何だろうって。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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