第137回 若い人に出会ったときに思い出す詩
自分よりも若い人が、キラキラした瞳で夢を語ったりするのを見ていると、いいなあと思います。
自分にもそういうときがあったなあ。大変なこともあると思うけど、きっと大丈夫だよ。そう心の中でつぶやいたりするものです。
そんなときに思い出す詩があります。
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Generations
Amy Lowell
You are like the stem
Of a young beech-tree,
Straight and swaying,
Breaking out in golden leaves.
Your walk is like the blowing of a beech-tree
On a hill.
Your voice is like leaves
Softly struck upon by a South wind.
Your shadow is no shadow, but a scattered sunshine;
And at night you pull the sky down to you
And hood yourself in stars.
But I am like a great oak under a cloudy sky,
Watching a stripling beech grow up at my feet.
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世代
エイミー・ロウエル
君は木の枝
若いブナの木の枝
真っ直ぐ そして揺れながら
黄金の葉を伸ばす
君が歩く姿は風に吹かれるブナの木
丘の上のブナの木
君の声は葉のように
南風のようにやさしく震える
君の影は影なんかじゃない 散らばった陽の光
夜になると 空を引っ張ってきて
星のフードに身を包む
わたしはと言うと 曇り空に立つオークの木
足元で伸びる若いブナの木を眺めてる
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若い人は a beech-tree「ブナの木」であるというのが、絶妙の例えですよね。
You are like the stem
Of a young beech-tree,
Straight and swaying,
Breaking out in golden leaves.
君は木の枝
若いブナの木の枝
真っ直ぐ そして揺れながら
黄金色の葉を伸ばす
若い人は、ブナの木のように真っ直ぐです。混じり気のない目と、真っ直ぐな思い。こうしてみたいとか、こうあるべきだとか、自分の思いに正直に生きる日々。
若い人のいいところは、真っ直ぐな思いを抱きながらも、同時に、揺れてしまうところです。
こうしよう、こうしたいと思っていたのに、周りからいろいろ言われたり、世の中の現実を知ったりするうちに、できるかどうか分からなくなったり、自分の考えや選択は正しかったのだろうかと迷ったり。
しかし、そういった思いの先で伸ばす未来の姿は、いつも黄金色なのです。
ああすればよかったかな、こうすればよかったかな、とその時々は思うわけですが、少し前には想像もしていなかったような出会いや機会に恵まれ、可能性の枝を伸ばし、手ごたえの葉をひとつひとつ広げていくものです。
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Your shadow is no shadow, but a scattered sunshine;
君の影は影なんかじゃない 散らばった陽の光
若いということは、可能性に満ちてはいますが、心の中はいつも快晴とはいきません。
真っ直ぐに生きていると、それだけぶつかることも多くなります。
他人から言われることや、様々な出来事に直面でするたびに、嵐のような感情を味わったりします。自分の影の部分、暗い部分にも気を取られてしまいます。自分は何をすべきなのか、何をしたいのか、色々と見えれば見えてくるほどに分からなくなってしまったり、悩んでしまったりします。
しかし、その影は影ではないのです。
可能性の光は散らばってしまうので、暗くて影に見えてしまうのですが、光が散らばっているので見えていないだけなのです。何かひとつにギュッと光を当てれば、明るい道が見えるはずなのですが、周りの言葉や新しく知ることによって、思いは拡散してしまいます。
しかし、それは散らばった可能性の光でもあるのです。
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今回の訳のポイント
若い人の真っ直ぐな心と、揺れる思いを、ロマンチックに描いてくれている詩ですが、次の2行が最高にロマンチックです。
And at night you pull the sky down to you
And hood yourself in stars.
夜になると 空を引っ張ってきて
星のフードに身を包む
若い人は、自分の一直線な思いとは裏腹に、人からいろいろと言われたり、世の中を知ったりしていくうちに、自分の道が見えなくなってしまうことがあります。
それは、一見すると、夜の暗闇にも思えるわけなのですが、そうしたひとつひとつはすべて可能性の光でもあるわけです。星は夜空の天蓋に散りばめられているため、ひとつの大きな光の塊のようには輝きません。
しかし、星の光はそれぞれに瞬いていて、それぞれが自分の人生を創り上げてくれる可能性なのだ。そう思えれば、暗い夜も未来も、明るいものに思えてくるものなのです。
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