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第126回 信頼できるひとに出会ったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

人生には困難や苦難がつきものですが、信頼できる人がそばにいると、乗り越えられるような気がしてきます。

夏の嵐に遭い、激しく降る雨や雷にさらされたとき、ふと、信頼できる人について思い出す詩があります。

「夏の嵐」と「信頼できるひと」にどんな関係があるのか。まあ、読んでみてください。

*****

Summer Storm
Sara Teasdale

The panther wind
Leaps out of the night,
The snake of lightning
Is twisting and white,
The lion of thunder
Roars — and we
Sit still and content
Under a tree —
We have met fate together
And love and pain,
Why should we fear
The wrath of the rain!

*****

夏の嵐
サラ・ティーズデイル

豹のような風が
夜の闇から飛び出す
蛇のような稲妻は
ジグザグに真っ白な線を描く
ライオンのような雷鳴が
とどろく わたしたちは
じっと おだやかに
樹の下で雨宿り
わたしたち ふたりで運命に
愛に 痛みに 立ち向かうんだよね
だから 怖くなんかない
荒れ狂う雨なんか!

*****

雨に降られてびしょびしょになってしまいながらも、樹の下でお互いに身を寄せ合うふたり。そのおだやかな笑顔が思い浮かびませんか。

これって、困難な状況に追い込まれているのだけれど、そばに信頼できる人がいるときに感じる、何とも言えない安心感に近いものがあるなと思うんです。

*****

The panther wind
Leaps out of the night,
豹のような風が
夜の闇から飛び出す

人生の困難って、予期せぬタイミングで飛び出してくるものだなと。それは闇から飛び出してくる豹。その突風のような勢いに負けてしまいそうになるなと。

The snake of lightning
Is twisting and white,
蛇のような稲妻は
ジグザグに真っ白な線を描く

突然の困難に見舞われると、事態を冷静に捉えられずに、どうしても周りが見えなくなってしまいます。それは目をくらませるような稲妻と同じなのかもしれないなと思えます。

The lion of thunder
Roars — and we
ライオンのような雷鳴が
とどろく わたしたちは

自分を苦しませる他人の言葉は、まるで吠えるライオンのようなとどろきで、思わず耳をふさぎたくなってしまいます。

We have met fate together
And love and pain,
わたしたち ふたりで運命に
愛に 痛みに 立ち向かうんだよね

そんな辛い運命に立ち向かわなければいけないとき、そばに信頼できる誰かがいたら。楽しいことだけでなく、辛いことも、乗り越えられそうな気がしてきます。

*****

今回の訳のポイント

詩として素敵だな、と思う時は、状況に相反する気持ちが描かれていることが多いです。この詩でも、夏の嵐に遭い、樹の下に駆け込んで雨宿りしているという状況ですが、心は高鳴っている。そんなコントラストが描かれています。

The lion of thunder
Roars — and we
Sit still and content
Under a tree —
ライオンのような雷鳴が
とどろく わたしたちは
じっと おだやかに

ここで面白いのは、英語ではand「そして」と内容を並列させる接続詞が使われているのですが、どう考えても状況としては逆のことを言っている点です。

「ライオンのような雷鳴がとどろく」けど「わたしたちはじっと おだやかに」、雨に降られて身を寄せ合って「じっと」しているけど「おだやか」な気持ちでいる。この「けど」を入れてもいいのですが、それがなく並列されていることで、身を寄せ合う本人たちにとっての「おだやかさ」が当たり前のように感じられます。

Why should we fear
The wrath of the rain!
だから 怖くなんかない
荒れ狂う雨なんか!

だからこそ、「なぜ雨を怖がるだろうか」=「怖くなんかない!」という言葉が出てくるのです。

Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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