第124回 仲直りしたいときに思い出す詩
けんか。
親子や兄弟、パートナーや友人という近い存在だからこそ、けんかしてしまうことがあります。
大切な人だからこそ、求めすぎてぶつかってしまう。けんかしたら、仲直りをしなくてはいけないのですが、そんなときに思い出す詩があります。
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Opal
Amy Lowell
You are ice and fire,
The touch of you burns my hands like snow.
You are cold and flame.
You are the crimson of amaryllis,
The silver of moon-touched magnolias.
When I am with you,
My heart is a frozen pond
Gleaming with agitated torches.
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オパール
エイミー・ロウエル
君は氷 君は炎
君が触れると 火傷しそう 冷たい雪と同じ
君は冷たくて 君は熱い
アマリリスの赤
月の光を浴びたマグノリアのシルバー
君といると
この心は凍った池のように
ざわめく焔に輝く
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好きの気持ち、大切な誰かを思う気持ちを、こんなにロマンチックな言葉にしてくれるなんて、胸がドキドキしてきませんか。
You are ice and fire,
The touch of you burns my hands like snow.
君は氷 君は炎
君が触れると 火傷しそう 冷たい雪と同じ
大切なその人は、氷であり炎でもある、というのはどういうことでしょうか。
その人を大切に思う気持ちは、炎のように胸を熱くさせます。その人が喜んだり、笑ったり、泣いたりするのを見たときに、胸にこみ上げる熱い気持ち。それは、まさに炎と言えるでしょう。
一方で、氷のような瞬間もあります。好きすぎて求めすぎてしまったり、期待ばかりをしてしまったり、そんなときの相手の反応に対して、もどかしい気持ちになることがあります。自分と同じ温度でない、そう感じたときに、冷たい氷のように感じたりもするのです。
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炎と思って手を伸ばしたら、それは氷だった。大好きで、大切に思うからこそ、ぶつかってしまったり、言いたかったことはこれじゃないのに、と思うことがあったりします。
子どもがトコトコとスッポンポンでお風呂から出てくる姿はたまらなく可愛くて愛おしいのに、自分の口から出た言葉は「お願いだから、体拭いて!風邪引くから!」
忙しい中で時間を作ってくれたのは、こんなに嬉しいのに、ごめんごめんと現れた姿に、こんなに胸が高鳴っているのに、自分の口から出た言葉は「遅れるならメッセージちょうだいよ!待ってたんだよ!」
こうした言葉は、愛ゆえに漏れる言葉なのです。
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今回の訳のポイント
この詩のタイトルは、Opal「オパール」
それは、青や赤や黄色や紫や緑に、極彩色の煌めき。炎と氷のように、異なる色が混じり合います。
そんな詩を完璧にしているのは、最後の一行。そこで光り輝く言葉が、agitated torches「ざわめく焔」です。
When I am with you,
My heart is a frozen pond
Gleaming with agitated torches.
君といると
この心は凍った池のように
ざわめく焔に輝く
agitatedには、何かに激しく動揺させられるという意味があって、ここでは、agitated torches「ざわめく焔」という風に、torches「たいまつの焔」と結びついて、ものすごく詩的な表現になっています。
けんかして、ぶつかって、怒ったり悲しくなったり、自分の中で何か譲れないものがあって、心は氷のように冷たくなってしまう。それなのに、奥底には燃える焔がある。
こんなに好きなのにどうして大切にできないんだろう、こんなに大切な人なのにどうしてあんな言葉をかけてしまったんだろう。そんなときに、心に揺れる焔は、優しくほんのり燃える焔というよりは、agitated torches「ざわめく焔」だなと思います。
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