第119回 やりたいことがたくさんあるときに思い出す詩
やりたいことがたくさんあって、ワクワクが止まらないことがあります。
一つのことを始めてみたら、別のことに興味をもったり、誰かに出会って、新しい可能性が広がったり。
しかし、そんな風に忙しくしているときに、ふとひとりきりで走っているような感覚に陥ったりします。
そんなときに思い出す詩があります。
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Morning Song
Sara Teasdale
A diamond of a morning
Waked me an hour too soon;
Dawn had taken in the stars
And left the faint white moon.
O white moon, you are lonely,
It is the same with me,
But we have the world to roam over,
Only the lonely are free.
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朝の歌
サラ・ティーズデイル
朝の煌めくダイアモンド
1時間は早く目覚めたわたし
星々を飲み込む夜明けの光
淡く白い月を残してゆく
白い月 君も孤独なんだね
わたしもだよ
見て 世界は広くて
見るものがいっぱいある
孤独な人だけが自由になれるんだよ
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朝、ダイアモンドのように煌めく太陽。早起きした者だけが味わえる特権です。
夜明けの大きな光が、星々の小さな明かりを飲み込んでいき、代わりに昼の月を残していきます。
星々が去ったあとに空に残される月。ふと周りを見回すと、自分ひとりになってしまっている。
O white moon, you are lonely,
It is the same with me,
白い月 君も孤独なんだね
わたしもだよ
「孤独」というキーワードが登場し、朝の美しい描写から、一気にネガティブ路線に進むのかと思いきや、It is the same with me「わたしもだよ」という究極のやさしさ路線に!
詩人は、空に浮かぶ月に向かって、言っているだけなのですが、何故か読んでいる自分に語りかけているような気がしてきます。
興味というものは取りとめもないもので、この世を右へ左へ脈略なく歩き回るうちに、素敵なものに出会ってゆく。
世の中に散らばる醜いものや美しいものに目を奪われ、拠り所を持たずに彷徨うことは、何かに縛られないという自由を謳歌しているとも言えるし、寄る辺なき定めでもあるとも言える。それが孤独な旅人の宿命であると。
そんな不安に襲われそうになったとき、ひとりだからこそ味わえる自由があるという言葉は、ダイアモンドのように煌めく朝の光のごとく、旅人の道を照らしてくれるように思えます。
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今回の訳のポイント
「孤独」や「月」や「朝」は詩のモチーフとして、よく用いられます。特に「月」は「孤独」の象徴として描かれることも少なくありません。それをどう描くかが詩人の腕の見せ所です。
この詩の最も美しい箇所は、「孤独=自由」と高らかに謳う、この一行でしょう!
Only the lonely are free.
孤独な人だけが自由になれるんだよ
ひとは人生の様々な航路をたどって、ときに絶海の孤島で、人とのつながりを失ったように感じることがあります。逆に、どんなに周りに人に囲まれていても、真のつながりを持てずに違和感だけが募ることもあります。
しかし、ふと顔を上げて見渡していると、玉石混交とは言え、さまざまな可能性に満ちているのがこの世の中です。ひとりだからこそできるチャレンジがあり、味わう失敗があり、得られる喜びがある。
星々が、朝の圧倒的な光に飲み込まれる様子を見送りながら、今日もまたひとつ挑戦をしてみよう、そう思えたら、素敵な一日が待っているように思えてきます。
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