第118回 人と分かり合えないときに思い出す詩
価値観の違い。
生きていると、人と分かり合えないことがあったりします。
十人十色で、ひとりとして同じ人間はいない。
そう分かっていても、やっぱり、誰かと理解し合えないのは、悲しいものです。
そんなときに思い出す詩があります。
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Stars
Carl Sandburg
The stars are too many to count.
The stars make sixes and sevens.
The stars tell nothing – and everything.
The stars look scattered.
Stars are so far away they never speak when spoken to.
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お星さま
カール・サンドバーグ
お星さまは多すぎて
何が何だか分からない
何も教えてくれない
そして何でも教えてくれる
バラバラに散らばっていて
遠く遠くにあるから
声をかけても答えてくれない
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「お星さま」を人に置き換えると、まさにそのとおり!と思えてきませんか。
人間は多すぎて、お互いに何を考えているのかなんて、分からない。
人それぞれだから周りの人の意見なんて気にしない!と思ったそばから、人との出会いによって図り得ないほどの気づきと学びを得たりもする。
そんなわたしたちは、ときに、つながりを失い、ばらばらの存在として、人の波に放り込まれたりします。
根本的な価値観の違いであったり、目指す方向性の違いであったり、経験や視野の違いであったり、さまざまな理由で、人を遠くに感じたりもするのです。
こちらの思いを伝えようとどんなに声を上げても、反応がない。
というわけで、「お星さま」を人間に置き換えてみると、とっても寂しい気持ちになってしまったりします。
しかし、夜空を見上げて、瞬きはするが声を発しない星たちを見ていると、ふと思うんです。
they never speak when spoken to.「声をかけても答えてくれない」のは、自分自身が自分という星に立ったままでいるからなんだと。相手の星に出かけて行かなければ、相手が黙っている理由も分からないのではと。
今、この人が黙っていたり、反論したりしている背景にある、経験や体験を垣間見て初めて、少し距離を縮められるのではないか。そう思います。
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今回の訳のポイント
この詩の謎はこの一行です。
The stars make sixes and sevens.
何が何だか分からない
「星」と「六」や「七」にどんな関係があるのかと思いますが、sixes and sevensはサイコロ遊びの目の話で、良くない目のこと、つまり不安・混乱を指します。
シェイクスピアの『リチャード二世』でも使用されている慣用句となっています。
And every thing is left at six and seven.
すべてが混乱に陥ってしまった
こういう言葉を耳にすると、不穏な空気に胸がざわざわするのですが、この詩はやっぱりやさしいなと感じるのは、この一行です。
The stars tell nothing – and everything.
何も教えてくれない
そして何でも教えてくれる
人も人生も、それ自体は、あれこれと手取り足取り教えてくれるわけではありませんが、そこで大切なことを学ぶものです。
この箇所の英語が素敵なのは、and「そして」を使っている点です。「何も教えてくれない でも何でも教えてくれる」という逆説的なこととしてではなく、「何も教えてくれない そして何でも教えてくれる」という並列的な人生の真実を語ってくれているのが、心に響きますね。
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