第114回 熱い人に出会ったときに思い出す詩
熱い人は、エネルギーにあふれていて、いつも人のために全力で走り回っています。
熱い人は、自分や他人の熱き思いを実現すべく、右へ左へ駆けずり回るのですが、人の心を動かす言葉を生み出す達人だったりもします。
その意味で、熱い人=詩人だなと思うことがあります。
そんな熱い人に出会い、深い共感を覚えたときに思い出す詩があります。
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Only a Simple Rhyme
Ella Wheeler Wilcox
Only a simple rhyme of love and sorrow,
Where “blisses” rhymed with “kisses,” “heart,” with “dart:”
Yet, reading it, new strength I seemed to borrow,
To live on bravely and to do my part.
A little rhyme about a heart that’s bleeding—
Of lonely hours and sorrow’s unrelief:
I smiled at first; but there came with the reading
A sense of sweet companionship in grief.
The selfishness of my own woe forsaking,
I thought about the singer of that song.
Some other breast felt this same weary aching;
Another found the summer days too long.
The few sad lines, my sorrow so expressing,
I read, and on the singer, all unknown,
I breathed a fervent though a silent blessing,
And seemed to clasp his hand within my own.
And though fame pass him and he never know it,
And though he never sings another strain,
He has performed the mission of the poet,
In helping some sad heart to bear its pain.
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韻をちょっと踏むだけで
エラ・ウィーラー・ウィルコックス
韻をちょっと踏むだけでいいの 愛と哀しみの韻を
「はずむむね」には「くちづけ」を 「こころ」には「いしころ」を
読めば力が湧いてくる
負けずに生きる 自分なりに頑張る力が
韻をちょっと踏むだけでいいの 傷だらけの心に
ひとりの時間に 消えない哀しみに
ちょっと微笑んで でも読むごとに感じるの
同じ哀しみを抱えていたんだねって
嫌なことから逃れたいって 自分勝手なのかなって
どんな人がこれを歌ったのだろう
同じように胸の痛みにうんざりしていたんだね
夏の日は長すぎるって思っていたんだね
悲しい一行一行が自分そのものだったり
詩人がどんな人かなんて知らなくても 読めばわかる
静かだけど熱い そんな幸福感を吸い込んで
彼の手にわたしの手を重ねたように思った
名声が通り過ぎたことに気づかなかったけれど
彼らしくない歌を歌うこともなかったけれど
詩人の使命は果たした
苦しみに耐える そんな傷ついた心を救ってきた
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詩や歌の良いところは、自分の気持を代弁してくれる言葉に出会うことなのではないかと思います。
誰かの言葉が、まるで自分のことを言っているように感じる。
熱い人の言葉は、自分の胸の一番深くやわらかいところに届きます。それというのも、愛と哀しみという、深い感情を味わった人の言葉だからなのかもしれません。
A sense of sweet companionship in grief.
同じ哀しみを抱えていたんだねって
熱い人の原動力は、自身の経験した大きな悲しみであったり、解決したい社会課題だったりします。そこには、愛と哀しみがあって、その人の背景を知らなくても、言葉の端々や行動の一つ一つににじみ出ていたりします。
熱い人の言葉に耳を傾けながら、自分の心にも熱いものを感じるのは、自分の中の暗い影や弱いところを包み込んでくれるような感覚を覚えるからかもしれません。
I breathed a fervent though a silent blessing,
And seemed to clasp his hand within my own.
静かだけど熱い そんな幸福感を吸い込んで
彼の手にわたしの手を重ねたように思った
そして、今、その言葉を投げかけてくれている人自身の中にも、同じ暗い影や弱い部分を見出すからかもしれません。自分の思いを表現しようともがいている人への優しい思いが、自分の心を癒してくれるからかもしれない、そう思います。
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今回の訳のポイント
この詩の中で、もっとも心を揺さぶられるのは、この一行ではないでしょうか。
The selfishness of my own woe forsaking,
嫌なことから逃れたいって 自分勝手なのかなって
幸福を追求しようとしたり、自分らしさを追求しようとしたりすると、この自問自答に悩まされることがあるかもしれません。
過酷な環境に身を置かざるをえなくなった人たちが世の中にいる一方で、そういったものからは自由な自分。selfishness「自分勝手」という直截な表現にドキッとします。
しかし、そんな時こそ、熱き人の言葉に思いを重ねればいいのかなと思います。
Only a simple rhyme of love and sorrow,
韻をちょっと踏むだけでいいの 愛と哀しみの韻を
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