第104回 世界と繋がっていると感じたときに思い出す詩
「知り合いの知り合い」という風に、6人の知り合いを介せば、全く関わりがないと思われる、世界のどこかの2人であっても、結びつくという仮説があります。
それほどまでに世界は狭いのだということなのですが、電車に乗りながら、ふと周りを見回したとき、今この車両にたまたま乗り合わせた人たちは、ひょっとするとどこかでベンダーとクライアントしてつながっているかもしれないとか、共通の知り合いがいるのかもしれないと思ったりします。
そんな世の中の結びつきを考えるときに思い出す詩があります。
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No Man Is An Island
John Donne
No man is an island,
Entire of itself.
Each is a piece of the continent,
A part of the main.
If a clod be washed away by the sea,
Europe is the less.
As well as if a promontory were.
As well as if a manor of thine own
Or of thine friend’s were.
Each man’s death diminishes me,
For I am involved in mankind.
Therefore, send not to know
For whom the bell tolls,
It tolls for thee.
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誰も孤立した島ではない
ジョン・ダン
誰も孤立した島ではない
誰もが大陸の一部なのだ
本土の一部が波に洗われたら
欧州はその分だけ小さくなる
岬を失うように
あなた自身の領地が
またはあなたの友人の領地が失くなるように
誰かを失うことは自分の身を削がれるのと同じだ
なぜなら人類皆と繋がっているからだ
だから使いを出して知ろうとしなくていい
誰のために弔鐘が鳴るかなど知らなくていい
その鐘はあなたのために鳴っているのだから
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わたしたちは一人では生きていけません。今この瞬間に食べているごはんは、誰かが育ててくれたものであり、あるときはトラックで、あるときは船に運ばれて、食卓に届いています。
そのために誰かが企画会議を行い、見積書を作り、残業しながら、ときには謝ったり、ときには愚痴をこぼしたりしてはじめて、私たちは商品やサービスを享受できています。
逆に、今の自分のがんばりが、誰かの生活を良くすることにもつながっているのだと感じることもあります。
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そう考えると、私たちはそれぞれに孤立したisland「島」ではなく、continent「大陸」としてひとつの運命共同体であり、involved in mankind「人類皆と繋がっている」と言えます。
その中の誰かを失うことは、決して他人事ではなく、manor「自分の領地」を失うことと同じで、自分の一部を失うことに匹敵するのです。
と言うことは、弔いの鐘が響くのは、自分と無関係の誰かの死のためでなく、自分と繋がった誰かの死なのです。
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今回の訳のポイント
ニュースは、国内外の事件・事故・紛争についてレポートしてくれますが、それらは決して他人事ではなく、世界はお互いに結びつきあっていて、involved in mankind「人類皆と繋がっている」という言葉が胸に響きます。
そして、何よりも驚愕するのは、この詩、厳密には詩的な随想文を、熱病で死線をさまよった作者ジョン・ダンが綴ったのが、今からちょうど400年ほど前の1623年のことだという点です。
そして、さらに驚愕するのは、こうした真理が400年前に熱く語られたものの、今も私たちは分断の時代を生きているという点です。