第99回 やさしい人に出会ったときに思い出す詩
「どんな人が好き?」「やさしい人かな」
そんな会話があったりすると、「やさしい人」ってどんな人なのだろうと思うことがあります。
そんなときに思い出す詩があります。
*****
Whole Duty of Children
Robert Louis Stevenson
A child should always say what’s true
And speak when he is spoken to,
And behave mannerly at table;
At least as far as he is able.
*****
子どもがすべきこと
ロバート・ルイス・スティーブンソン
子どもは
正しいことだけを言い
話しかけられたときだけ話し
食事のときはちゃんと席についていること
できたらの話だけど
*****
「やさしい人」って、ぶれない軸がありながら、心のキャパが大きいひとなのかなと思います。
この詩では、子どもはこうあるべきだと並べた上で、At least as far as he is able.「できたらの話だけど」としっかりオチがついています。
「こうあるべきだ」という自分の信念はありながらも、現実はいつもうまくいくものではないということもわかっている。それが「やさしい人」の神髄なのかなと。
*****
A child should always say what’s true
子どもは
正しいことだけを言い
子どもは、正しくないことをしたがり、滅茶苦茶なことを言ったりすることがあります。自分の世界を広げるために、どこまでが許されるのかを実験をしているに過ぎないと受け止める「やさしさ」が必要で、「それはOK。でも、これはNG」というのを大人は伝える必要があります。
And behave mannerly at table;
At least as far as he is able.
食事のときはちゃんと席についていること
できたらの話だけど
食事のときは席について大人しくしているのが、子供の務めですが、現実はそう簡単ではありません。食べ物をこぼしたり、お皿をひっくり返したり。小さい手でよくもまあ一生懸命口に運ぶなあと感心しながら見たりするわけですが、席についているということだけでもひと苦労なのです。
だからこそ、At least as far as he is able.「できたらの話だけど」というひと言が出てくるのではないかと思います。
綺麗事だけでなく、泥臭い現実の汗と涙の価値を認めているので、思い通りにいかないことにも心を大きく乱すことなく、大きな心で向き合える。そんな「やさしい人」でありたいと思います。
*****
今回の訳のポイント
この詩のタイトルは、Whole Duty of Childrenであり、堅く訳せば「子どもの務め」となります。
しかし、これをもう少し子どもらしく、やわらかい日本語にするとなると、名詞を動詞に訳すのが得策です。duty「務め」=「すべきこと」とすると、詩全体と調和した語感とリズムを維持できます。
「やさしい人」は、漢字的というよりもひらがな的なイメージで、しなやかな心を持つ人というニュアンスを表現できるのは、日本語の文字体系だからこその良さですね。
【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program