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第96回 ちょっといいことがあったときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

日常生活の中で、キラッと光るような素敵な瞬間に出会うことがあります。

大きな成果を求めて忙しくしているときに、ふと訪れる素敵な出来事。遠くばかり見ていて、気づかなかった身近な宝物。

そんなことを考えると、夜、真っ白な雪の上を走って行って、夜空を見上げ、この詩を口ずさみたくなります。

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Night
Sara Teasdale

Stars over snow,
And in the west a planet
Swinging below a star—
Look for a lovely thing and you will find it,
It is not far—
It never will be far.

*****


サラ・ティーズデイル

空に星 足元に雪
西に惑星
星よりも近く軌道を回る
素敵なことに出会いたい?
きっと見つかるよ
それは遠くないよ
遠くなんかないよ

*****

雪の積もった夜、外に出ると、澄み渡った空に、星が瞬きます。

宇宙の遠く彼方から届く星たちの光。そんな煌めきの中に、ひときわ明るい輝きが目に止まります。

それが惑星です。わたしたちの住む太陽系の仲間。星たちよりももっと近くで、一緒に軌道を回る星。

ここまでだけであれば、ただの星空観察日記になります。しかし、詩人はここから、一気にわたしたちのハートをつかみにかかります。

*****

Look for a lovely thing and you will find it,
It is not far—
It never will be far.
素敵なことに出会いたい?
きっと見つかるよ
それは遠くないよ
遠くなんかないよ

なるほど、遠くの星に目を奪われていたけれど、実はもっと近くに明るい光があったのだなと。それは、身の回りの生活も同じで、素敵なことは、遠くでなく案外身近なところにあるんだなと気づくということなんだと。

遠くで光る目標達成の輝きはまばゆいですが、今日一日全力を尽くしたことも、同じように輝いていると認めたり。外の世界で多くの素敵な人たちに出会うけれど、一番身近な人の言葉がふと心に響いて涙がこぼれたり。

詩の良いところは、遠くのことを言っているようで、身近な半径5メートルのことを言っていたり、近くのことを言っているようで、遠く思える深い真理を言っていたりすることなんだと、この詩は教えてくれます。

*****

今回の訳のポイント

この詩は、遠くの星と近くの惑星について話しながら、素敵なことは近くにもあるよと言っています。

素敵なことはあなたのそばにある、というメッセージは教訓臭く聞こえてしまったりすることもあります。しかし、この詩人、この詩のもつ優しげな雰囲気を日本語にするとなると、自分にとって最も身近な言葉にするのが良いはずです。

そうすると、素敵なことは「とおくない」でなく、「とおくないよ」であり、「とおないで」でも「とおなかばい」でもいいのかなと!

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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