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第90回 冬の寒い朝に早起きしたときに思い出す詩

にしだ きょうご

今日をやさしくやわらかく みんなの詩集

冬の朝は起きるのが辛いです。特に、冷え込んだ朝はなおさら布団から出られなくなります。

しかし、早起きして空を見ると、地平線から徐々に白んでいく光景に、とても清々しい気持ちにもなります。

そんな朝に思い出す詩があります。

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A Winter Dawn
Lucy Maud Montgomery

Above the marge of night a star still shines,
And on the frosty hills the sombre pines
Harbor an eerie wind that crooneth low
Over the glimmering wastes of virgin snow.

Through the pale arch of orient the morn
Comes in a milk-white splendor newly-born,
A sword of crimson cuts in twain the gray
Banners of shadow hosts, and lo, the day!

*****

冬の夜明け
ルーシー・モード・モンゴメリー

夜の縁(ふち)に星がひとつ輝きを失わずにいる
霜の降りた丘では松の木々の黒い影が
低く唸る気味悪い風をかくまう
初雪に光る荒野を吹き抜けて来たのだ

青白い東の空のアーチをくぐりぬけて 朝は
やって来る 生まれたての乳白色のまぶしさ
緋色の剣が真っ二つに切り裂くのは
暗闇の軍勢 その灰色の旗 ほらご覧 朝だ!

*****

ロマンチックな言葉に彩られて、夜明けの光や寒さが感じられませんか?

ルーシー・モード・モンゴメリーは、夜と朝が入れ替わる瞬間を、「朝焼けの谷間から昼が夜の背中を追いかけた」という詩などでもロマンチックに描いています。この詩人が得意とするロマンチックな言葉運びです。

・The marge of night「夜の縁」
・The frosty hills「霜の降りた丘」
・The sombre pines「黒い影のような松の木々」
・An eerie wind that crooneth low「低く唸る薄気味悪い風」
・Virgin snow「初雪」
・The pale arch「青白い天空のアーチ」
・A milk-white splendor「乳白色のまぶしさ」
・A sword of crimson「緋色の剣」

こんな言葉の並びを見ただけで、明けきらない夜の暗い影と、キラキラと朝日に光る雪原とのコントラストや、凍えるような寒さを感じませんか。

前半は、暗い夜を象徴するような松林が、お化けのようにヒューヒューと唸る風を、その黒い影にかくまうようにして、朝から逃げるように去っていきます。

後半は、現れた朝がまばゆい光を放って、夜の闇を切り裂くという劇的展開!

東の空低くで閃光を放つ朝の太陽は、A sword of crimson「緋色の剣」だという喩えに、破壊力がありますね。

こういうコントラストが一層際立つのが冬の朝。やはり早起きはいいものですね。

*****

今回の訳のポイント

ある言葉を別の言語に置き換えるときに、肯定を否定に、否定を肯定にしてみたくなるときがあります。

この詩の冒頭は、この一行で始まります。

Above the marge of night a star still shines,
夜の縁(ふち)に星がひとつ輝きを失わずにいる

still shines「まだ輝いている」としてもいいのですが、夜が白み始めて他の星の光が見えなくなっても、まだその光が確認できる様子は、「輝きを失っていない」としてもいいのではないかと思いました。「まだ生きている」が「生命力を失っていない」とも言えるのと同じ感覚です。

じりじりと広がっていく朝の光に埋もれそうになりながらも、しぶとく光を届ける。

そんな夜の最後のしぶきのような星を空に見つけると、今、自分は夜と朝の境目にいるのだと実感できます。

 

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Written by

記事を書いた人

にしだ きょうご

大手英会話学校にて講師・トレーナーを務めたのち、国際NGOにて経理・人事、プロジェクト管理職を経て、株式会社テンナイン・コミュニケーション入社。英語学習プログラムの開発・管理を担当。フランス語やイタリア語、ポーランド語をはじめ、海外で友人ができるごとに外国語を独学。読書会を主宰したり、NPOでバリアフリーイベントの運営をしたり、泣いたり笑ったりの日々を送る。

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