第89回 エネルギッシュな人に出会ったときに思い出す詩
どんなときも笑顔で、エネルギッシュな、元気溌剌としたひとがいます。
本人にも色々なことがあって大変なはずなのに、そんなことを感じさせず、前向きなパワーに溢れている。
そんな人に出会ったときに思い出す詩があります。
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Second Fig
Edna St. Vincent Millay
Safe upon the solid rock the ugly houses stand:
Come and see my shining palace built upon the sand!
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あざみの果 その2
エドナ・セント・ヴィンセント・ミレイ
固く安定した岩 そこに立つのは醜い家
ぜひ見に来てね わたしの輝く宮殿は 砂の上
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たった2行の詩ですが、The詩!という感じの奥深さを感じませんか。
人は安全・安心を求めて、情報や資材を手に入れ、自分の今の暮らしや立場を守ろうとします。Safe「安全」で安心できるのは、solid「安定した」岩の上に家があるから。ところが、そうした安全・安心で固めた家はugly「醜い」と言います。
安定を求めることにいつも汲々としていると、どこか余裕のなさが漂ってしまうものです。少しぐらついただけで、騒ぎ立ててしまい、不平不満をこぼしたり、自分の立場を守ることにあくせくしたり。
そんなとき、住む家は、どんなに土台が安定していたとしても、どこか醜さを感じさせるのだと。
うーん、ugly「醜い」とまで言われると、反論したくもなりますが、考えてみると、安心や安定が足りていないときの自分って、余裕もなくて、みっともない醜態を晒すこともあったかなと、反省しなければと思います。
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一方で、安心・安定からはかけ離れた暮らしをしているのに、溌溂としている人がいます。
自分の立場を固めようと躍起になることなく、むしろ不安定な人生を受け止めるようなやわらかさと心の大きさがあって、自分の好きなことを追求し、なおかつ他人にも心を配って元気づけてくれる。
だからこそ、どんなときもCome and see me「いつでも来てね」と、心が開かれていて、エネルギーに満ち溢れ、輝いています。
そういう人の住む家は、upon the sand「砂の上」にあるとしても、そこに建つのは、shining palace「輝く宮殿」であると言えます。
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そして、人が輝くときというのは、栄光を手にしたときだけではないなと、ここで改めて気づかされます。
子どもが算数の問題が分からないと泣きながらも懸命に問題を解いているとき。ヤダヤダと子どもが駄々をこねて暴れて周りの冷たい視線が痛くても、真摯に子どもと向き合っているとき。仕事でトラブルが発生して周りが文句を言うなか、黙々と処理に奔走しているとき。
そんなときは、砂の上に立っているようで、足元もおぼつかなくても、たとえどんなに不安で落ち着かなくても、わたしたちのハートには熱いエネルギーが脈打っていて、確かに、輝きを放つのだと。
今回の訳のポイント
この詩を音の面からみると、短い詩の中に何度もSの音が登場することに気がつきます。
safe/solid/stand/see/shining/sandという風に、繰り返される「スー」という息の抜ける音が、砂の上を渡る風音のように思えてきます。
そして、「その2」とタイトルにあるように、この詩は「わたしは蠟燭を 両端から燃えす」という詩との連作になっています。
情熱のかたまりのような人は「燃え尽きてしまうよ」と言われても、人生の摩擦や衝突も自分を奮い立たせるエネルギーにして生きているという詩です。
この詩でも、不安や波乱を回避することに汲々とするのでなく、upon the sand「砂の上」を歩くときのように足元は不安定でも、颯爽と歩く人の姿が浮かんできて、胸が熱くなります。
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