第85回 満天の星を見たときに思い出す詩
満天の星。
真っ暗な夜に、星が見たくて空を見上げると、ひしめき合うように星々が瞬いています。
大きな空を埋め尽くすような星々の瞬きに、自分というちっぽけな存在に、宇宙の壮大さに、圧倒されたときに思い出す詩があります。
星を見ようと、暗闇の中ひとり丘に登り、空を見上げたときの感動をイメージして読んでみてください。
*****
Stars
Sara Teasdale
Alone in the night
On a dark hill
With pines around me
Spicy and still,
And a heaven full of stars
Over my head
White and topaz
And misty red;
Myriads with beating
Hearts of fire
The aeons
Cannot vex or tire;
Up the dome of heaven
Like a great hill
I watch them marching
Stately and still.
And I know that I
Am honored to be
Witness
Of so much majesty.
*****
満天の星
サラ・ティーズデイル
夜中にひとり
真っ暗な丘に登り
松の丘に立った
ざわざわと
しんしんと
天空には星
満天の星
白にトパーズ
霞んだ赤
幾千万の脈打つ
心臓のような火の玉
膨大な時間のかたまりにも
たじろがず
とまどわず
天蓋は
丘のよう
星々が行進していく
堂々と
粛々と
そうなんだ
わたしは何て幸せなんだろう
目に焼きつけたんだ
この壮麗さを
*****
一面に星が瞬くような夜に、少しでも星に近づきたくて、丘に登ります。
見上げた空に、静かに明滅する星々。そのひとつひとつはspicy「生き生きとして」いて、でもはるか時空を越えて届く光の粒は、still「静止して」いるようにも感じられる。
星は、その年齢によって色が変わります。若い白やトパーズから、年老いた赤い星まで、宝石箱のように様々な煌めきが夜空を彩ります。
星、つまり恒星それ自体はガスなどが燃えているわけで、言ってみれば、Hearts of fire「脈打つ心臓のような火の玉」で、その膨大なエネルギーと光は、何光年ものThe aeons「膨大な時間のかたまり」を越えてやっと、わたしたちの目に届き増す。
その時間と空間の膨大さに、Cannot vex or tire「たじろがず とまどわず」に、その生命力を宿しながら、星は静かに夜空に光ります。
*****
また、星の運行は、壮大な宇宙に壮大な規模でその営みを刻みますが、正確な動きは、Stately and still「堂々と 粛々と」しています。
夜空に光る星は、見た目には大きく動き回るわけではありませんが、遥か何光年もかけてやっと自分の目に届くという膨大な時間の流れがそこにあります。
遙か彼方で生まれては、ときには何億年もかけて年老いていくという営みの壮大さを、Witness「目に焼き付ける」ことができたら、それはhonored「光栄な」ことと言えますね。
*****
今回の訳のポイント
この詩の大きなテーマは、星の煌めきの奥にある、大きな時間と空間です。
一見、夜空という天蓋に張り付いて静かに光っているように見える星ですが、日々季節ごとの正確な運行を繰り返して空に昇っては沈んで行きますし、その光は遙か彼方から届いたもので、星には膨大な一生があり、その一瞬をわたしたちは目撃したにすぎない。
そんな静と動のイメージを伝えているのが、この詩の美しいところです。
Spicy and still,
ざわざわと
しんしんと
星は、ただじっと光っているのでなく、地球の大気によって明滅します。ただ静かに光っているようでいて、実は太古の昔に生まれた光が今、大気を通って目に届いているという、刺激的な側面があります。
The aeons
Cannot vex or tire;
膨大な時間のかたまりにも
たじろがず
とまどわず
あまりにも桁違いな星の時間と距離に、人間という存在の卑小さを感じたりもしますが、たじろぐことも戸惑うこともなく、そんな凛々しい態度で生きていたいなと思います。
【英語力をアップさせたい方!無料カウンセリング実施中】
これまで1700社以上のグローバル企業に通訳・翻訳・英語教育といった語学サービスを提供してきた経験から開発した、1ヶ月の超短期集中ビジネス英語プログラム『One Month Program』
カウンセリングからレッスンまですべてオンラインで行います。
One Month Program