第78回 人生そんなこともあると言われたときに思い出す詩
「人生そんなものだから」
そう言われることがあります。
人との別れや、失敗や挫折など、生きていれば経験するものだから、と思えばいいということなのですが、頭ではわかっていても、気持ちの整理がつかないときもあります。
そんなときに思い出す詩があります。
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The Way of The World
Christina Rossetti
A boat that sails upon the sea;
Sails far and far and far away:
Who sail in her sing songs of glee,
Or watch and pray.
A boat that drifts upon the sea
Silent and void to sun and air:
Who sailed in her have ended glee
And watch and prayer.
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世の習わし
クリスティーナ・ロセッティ
小舟が一艘 海を渡ります
はるかかなたへ渡ります
舟人は歓喜の歌を響かせます
目を開き祈ります
小舟が一艘 海に漂います
陽の下に静寂が訪れます
舟人が歓喜の歌を響かせることはありません
目を開くことも祈ることもありません
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もし人生を航海に例えるなら、ひとりの人生は一艘の小舟。
大きな海を漕ぎ渡り、人生を謳歌する。真実に目を開き、祈る。
そして、そんな人生にも、いつか終わりが訪れる。
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昨日までバラ色の気分でいたのが、突然何かの出来事でガックリと落ち込んだり、昨日まで一緒にいた人が、去っていってしまったり。あたりまえのように思っていたことに突然終わりが訪れると、わたしたちは大きな動揺を感じます。
そんな時に「人生そんなものだから」と言い聞かせたり、言い聞かせられたりするわけです。
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この詩のタイトルである、The Way of The Worldは最も慣用的な日本語に訳すなら、「世の習わし」となるかと思います。
栄えていたものもいつかは滅びるという人生の真実。
「盛者必衰」、「諸行無常」、「生者必滅」など、日本語ではその類語に事欠きません。「会者定離」という言葉もあるように、この世で出会った者には、いつか必ず別れの時が来る。
そう思うと、今目の前にいる人と交わす言葉や共有する時間の尊さを思わずにはいられません。
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今回の訳のポイント
この詩の鍵となるフレーズが、watch and pray「目を開き祈る」です。
watchというシンプルな言葉の意味は何だろうかと思いますが、クリスティーナ・ロセッティは敬虔なキリスト教徒であったので、聖書にヒントがあります。
聖書におけるwatchとは、人生の誘惑に惑わされずに、心の迷いをなくし、真実に目を見開いていること。
watch and pray「目を開き祈る」というフレーズそのものは、弟子たちが、目を覚まし祈っていなさいと言われたのにも関わらず、眠ってしまったという場面に登場するのですが、人というのは所詮そんなものでもあるなと思えたりします。
人生という大海原を渡る小舟を漕ぎながら、灼熱の太陽に照らされたり、大波に襲われたり、その度に心を揺さぶられる。そして、どんなことにも終わりがある。
そう思うと、この航海を、思い切り謳歌してみようと思えてきます。
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