第67回 野望に燃えるときに思い出す詩
「そんなの無理だよ」
そう人に言われると、逆に「絶対にやってみせるぞ」と闘志に燃えることがあります。
他人からは、どんなに絵空事のように見えても、自分には、はっきりとその「夢」のすがたが見えていることがあります。
そんな時に思い出す詩があります。
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I Slept, And Dreamed That Life Was Beauty
Ellen Sturgis Hooper
I slept and dreamed that life was Beauty:
I woke and found that life was Duty:
Was then thy dream a shadowy lie?
Toil on, sad heart, courageously,
And thou shalt find thy dream to be
A noonday light and truth to thee.
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人生は美しい そんな夢を見た
エレン・スタージス・フーパー
眠りに落ちて夢を見た
人生は美しい そんな夢を見た
目が覚めて気づいた 人生は義務だ
じゃあ 夢は虚しい嘘なのかしら
悲しみを胸に抱えて でも凛々しく歩むの
そうしたら 気づくから
夜の夢は昼の光 あなたには「ほんもの」
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眠りの中で、あるいは白日夢の中で、「こうできたらすごいな!」という完璧な瞬間のイメージが浮かぶときがあります。
自分自身だけが掴んだ、そのイメージを再現すべく、昼の世界に戻るのですが、そこでは「できるかわからないこと」よりも、「できそうなこと」や「やるべきこと」が優先されます。
そして、Was then thy dream a shadowy lie?「じゃあ 夢は虚しい嘘なのかしら」と、疑心暗鬼に陥ります。自分の中では、美しく完璧に思えるイメージの世界は、所詮、夢物語でしかないのか、と。
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自分を疑うことほど、悲しいことはありません。
しかし、野望を現実にするには、あきらめずに歩みを進めなければいけません。それには勇気が要ります。
他人は自分の夢を信じてくれない。そんな昼の世界は、ある意味、夜よりも暗いかもしれません。
しかし、そんな悲しみに沈む心に、この詩は訴えかけます。
自分の中に確かにある、あの夢のイメージが、自分の歩む道を照らす光になる。
ひたすらに思いと労力を注ぎこんだ先で、truth「ほんもの」は掴めるのだと。
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今回の訳のポイント
この詩には、日本語らしく訳せる単語が2つあります。
ひとつは、courageouslyです。
悲しみに沈む人が、コツコツと苦しい道のりを歩んでいく。自分の思いを自分が信じられなくなりそうなとき、それでも前に進むときに欲しいのはcourage「勇気」ですが、courageouslyを「勇気をもって」とするだけでは、少し物足りなく感じます。
自分だけが夢で見た、あのイメージを信じて、ぶれずに自分の道を歩む姿は「凛々しく」見えるのでないか。そう思います。
そして、この詩の核心であるtruthが難しいです。
「真実」と言うと、誰からも認識されるような、普遍的な真理というようなイメージになります。しかし、ここでは、自分なりの夢のイメージを心に暖めて歩む人にとってのtruth。
他人から何と言われようと、現実離れした虚構ではなく、自分の中で確かにはっきりと像を描けるtruth。
それは「ほんもの」と言えるはずです。
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