第60回 ドキッとすることを言われたときに思い出す詩
Spring
この言葉には、ロマンチックな2つの意味があります。
「春」と「飛躍」
この2つは掛詞のように使われることがよくあります。
「春」の話をしているように見えて、「飛躍」を説いている。
それが、二人の距離を超える、つまり好きの気持ちだったら。そんなドキッとする詩を読んでみましょう。
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Spring
Sara Teasdale
IN Central Park the lovers sit,
On every hilly path they stroll,
Each thinks his love is infinite,
And crowns his soul.
But we are cynical and wise,
We walk a careful foot apart,
You make a little joke that tries
To hide your heart.
Give over, we have laughed enough;
Oh dearest and most foolish friend,
Why do you wage a war with love
To lose your battle in the end?
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スプリング
セントラル・パーク 腰を降ろす恋人たち
そぞろ歩く 丘と呼べるところ至るところ
人は思う この人の愛は無限だ
サーカスの道化なら 魂が無限だ
でも私たちって皮肉屋だしお馬鹿じゃないでしょ
くっつかない程度に歩いてみたり
軽い冗談を言ってみたり
君は何を言いたいの
もういいじゃない 私たちもう十分笑ったよ
ものすごく大切で ものすごくお馬鹿な君
好きの気持ちと戦うのはなぜ?
どうせ負けちゃうんだよ
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最後の2行がかっこいいですよね。
「お互いに好きだという気持ちに気づいているのに、どうしてその気持ちを抑えようとするの?どうせ抑えられないんだよ。」
春風吹く、公園の緑の木陰でこんなこと言われたら、心臓が飛び出そうですね。
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この詩にものすごく心奪われるのは、セントラル・パークをそぞろ歩く多くの恋人たちという、一般的な恋人の姿からはじまって、今、恋人という領域に踏み出そうとしている2人だけの会話に一気にフォーカスしていくところです。
皆がそうするように公園を歩いてみたり、愛は無限だと言ってみたり。
そんなありふれたことに意味があるのかという皮肉屋な面もある2人。
お馬鹿じゃないのでお互いの気持ちにも気づいている2人。
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肩が触れ合うかどうかという距離。間をもたせるための軽い冗談。
2人の心の距離が縮まるまでの、恥ずかしいくらいのそんな距離感。
そうこうしているうちに、グッと核心に迫ります。
軽い冗談はもういいから、気持ちを聞かせてほしい。好きだと言ってしまえばいいの。
どうせ好きの気持ちを隠すことはできないのだから。好きと言って。
これに答えるためには、「春」ではなく、心の「スプリング」で、一気に2人の間の壁を超える必要がありますね!
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今回の訳のポイント
この詩で、ありふれた恋人たちの姿から、2人の会話に場面が切り替わる一文があります。
But we are cynical and wise「でも私たちって皮肉屋だしお馬鹿じゃないでしょ」
Wiseという単語は、「賢い」というよりも、「ふつうなら分かるはず」というニュアンスの使われ方が多いです。
よっぽどのお馬鹿さんでなければ、今のお互いの気持ちに気づくだろう。ここでは、そんな意味合いですね。
そして、最後の2行。
「好きの気持ちと戦うのはなぜ?」=「戦っても無駄だよ」と言ってから、To lose your battle in the end「どうせ負けちゃうんだよ」のひと言が、心を鷲掴みにします。ここまで言われたら、心の殻を打ち破って、好きだと叫ぶしかないですね。
この「飛躍」のイメージは、三島由紀夫の『潮騒』の一節、「その火を飛び越して来い」に似たものがありますね。
心のスプリングで、どんな壁を飛び越えようか。そんなことを考えるだけで、ドキドキしてきます。
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