第59回 空はどうして青いのと聞かれたときに思い出す詩
空はどうして青いの?
心はどこにあるの?
小さな子どもが、そんな質問をすることがあります。
わたしたち大人は、それぞれにベストと思う回答を持っているかと思うのですが、そうした素朴な疑問を耳にすると思い出す詩があります。
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What are heavy? Sea-sand and sorrow
Christina Rossetti
What are heavy? Sea-sand and sorrow:
What are brief? To-day and to-morrow:
What are frail? Spring blossoms and youth:
What are deep? The ocean and truth.
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うみのすなとかなしみ
クリスティーナ・ロセッティ
なにがおもたい? うみのすなとかなしみ
なにがみじかい? きょうのひとあした
なにがはかない? はるのはなとわかさ
なにがふかい? うみとしんじつ
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浜辺の砂も悲しみも同じように重たく、今日も明日も短い。
春の花も若さも同じように儚く、海も真理も深い。
とても素朴な言葉とリズムが並んでいるだけなのですが、これら対照のさせ方がとても素敵ですよね。
例えば、ただ「真理は深い」と言われても、「あっ、そうですか」となってしまいますが、「うみのすな」から始まる詩の最後に置かれると、何だかとても深いものに感じます。
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「うみのすな」の重たさを考えるとき、イメージとしては波打ち際に行って、足元を波が洗っていくときの、ズズッと感じる重たさが思い起こされます。
波に足をもっていかれそうになるのと同じように、「かなしみ」に襲われて、心をもっていかれそうになる。
そんな感覚が押し寄せてきます。
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「みじかい」と「はかない」が、「おもたい」と「ふかい」にはさまれているのも、また効果的ですよね。
「みじかい」と「はかない」が引き潮だとするなら、「おもたい」と「ふかい」は迫りくる波。
寄せては返す波のように、波が引いたかと思うとまたザザーッと押し寄せてくる。
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こんなに短くてシンプルな詩なのに、波打ち際に立った時の波のさざめきやしぶきを感じてしまいます。
子どもが世界を発見していくときの驚きとは、自らの五感を通じて得た強烈なイメージ。
空の青さも、海のしょっぱさも、真実の重さも、いつも驚きをもって受け止めていたいなと思います。
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今回の訳のポイント
この詩は童謡詩に分類されることもあり、すべてひらがなで表記することにしてみました。
日本語のよいところは、表記によっても意図を伝えられるという点で、ひらがなにすることで、素朴な雰囲気を伝えられますよね。
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今回の詩の中で、素朴さを表すもう一つのポイントが、「おもたい」です。
「おもい」ではなく、「おもたい」。
「みじかい」や「はかない」と語数を揃える意味合いもありますが、それ以上に大きいのが「おもい」との違いです。
「おもい」は客観的ですが、「おもたい」と言うと、実際に手に持って感じる主観的な評価のイメージになりますよね。
素朴な気持ちとは、基準に基づく判断ではなくて、自分が直感的に感じた気持ち。
だとしたら、ここは「おもい」でなく、「おもたい」としたいですよね!
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