第57回 気持ちを切り替えたいときに思い出す詩
仕事のパフォーマンスが高い人の特徴のひとつに、気持ちの切り替えが速いというのがあります。
くよくよ考えずに、どんどん次の課題に向き合い、こなしていく。
そんなスピード感に溢れた詩があります。
「丘の午後」という詩なのですが、気持ちの切り替えと「丘」に何の関係があるのか。まずは読んでみましょう。
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Afternoon on a Hill
Edna St. Vincent Millay
I will be the gladdest thing
Under the sun!
I will touch a hundred flowers
And not pick one.
I will look at cliffs and clouds
With quiet eyes,
Watch the wind bow down the grass,
And the grass rise.
And when lights begin to show
Up from the town,
I will mark which must be mine,
And then start down!
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丘の午後
エドナ・セント・ヴィンセント・ミレイ
最高に幸せなんだろうな
陽の光をからだいっぱいに浴びて
咲き誇る花に触れてみよう
花を摘んだりはしないけれど
崖や雲をながめてみよう
しずかにそっと
風に草が傾ぐのを見ていよう
草はまた立ち上がるから
街に明かりが
灯りはじめるころ
あれが自分のうちだなって
それで一気に駆け下りていく
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心や頭にひっかかることがあると、なかなか物事が進まなかったりもします。
そんなときは外に出て、リフレッシュするのが一番ですね。この詩でも、丘の上に立ち、陽の光を浴びるときの高揚感から始まっています。
それだけですと、屋外で心も身体もリフレッシュして、気持ちを切り替えましょうという凡庸なアドバイスになってしまいます。
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パフォーマンスについて考えるとき、効率性がポイントになります。
細かなことを考えすぎて先に進めなくなるのでなく、ざっくりとした考えのもと物事を進めることの効率の良さ。
この詩では、咲き誇る花を見て、その美しさを描いたり、ひとつひとつの花の細部に美を見出したりはしません。
花畑を歩きながら、なんとなく、サーッと指先で花を撫でていく。それだけです。
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ボーっと明るい空を眺めたり、崖の暗がりをのぞきこんだり。
心も明るくなったり暗くなったり。
心が折れそうになっても、やっぱり立ち上がれるのは、風に吹かれて揺れる草が、決して倒れることはなく、またスクッと立ち上がるのにも似ています。
次から次へと吹きつける日常の強風に、しなやかに対処する姿を連想させます。
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そうこうしているうちに、街に明かりが灯ります。
多くの光に溢れていますが、自分が帰るべき場所はしっかりと分かっている。そんな確かさを胸に、一気に丘を駆け下りて、帰るべき場所に帰ってゆく。
そうして、また日常に立ち向かうのだ。そんな潔さで、詩は幕を閉じます。
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今回の訳のポイント
使われている単語はシンプルそのもので、小気味いいリズム。言葉がするする胸に落ちてきます。
「太陽」「花」「崖」「雲」「草」「街明かり」など明確な意味を持つ単語の力で、イメージは鮮明です。
訳にも脚色は必要なく、あれこれ考えずに読むことができるので、詩がもつスピード感をそのまま受け止められます。
丘の暖かな空気を胸いっぱいに吸い込んだら、一気に丘を駆け下りてゆく。
そんなことを考えながらこの詩を読むと、頭のモヤモヤが少しは晴れる気がしませんか。
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