第56回 春の山に出かけたくなったときに思い出す詩
春たけなわ。
山は、花に緑に染まります。
日差しに暖められた山から、鳥の声が聞こえてくると、肺いっぱいに春の陽気を吸い込みたくなりませんか。
春の輝きを詰め込んだ宝石箱のような詩で、心までポカポカ陽気に包んでみましょう。その名も「春の歌」です!
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Spring Song
Lucy Maud Montgomery
Hark, I hear a robin calling!
List, the wind is from the south!
And the orchard-bloom is falling
Sweet as kisses on the mouth.
In the dreamy vale of beeches
Fair and faint is woven mist,
And the river’s orient reaches
Are the palest amethyst.
Every limpid brook is singing
Of the lure of April days;
Every piney glen is ringing
With the maddest roundelays.
Come and let us seek together
Springtime lore of daffodils,
Giving to the golden weather
Greeting on the sun-warm hills.
Ours shall be the moonrise stealing
Through the birches ivory-white;
Ours shall be the mystic healing
Of the velvet-footed night.
Ours shall be the gypsy winding
Of the path with violets blue,
Ours at last the wizard finding
Of the land where dreams come true.
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春の歌
ルーシー・モード・モンゴメリー
耳をすましてごらん 駒鳥が呼んでいる
聴こえるかい 南の風が吹いている
果樹園の花は 散る
唇にそっと触れる口づけのように
樺の林 魅惑の谷間
織りなす霧は 儚く美しい
川の東は 見渡すかぎり
薄紫に染まる
透き通った小川がこぞって歌うのは
四月の魔力
松の木茂る渓谷に響くのは
一心に鳴く小鳥の歌
さがしにゆこう
水仙の春の物語を
輝くような天気に挨拶しよう
日差しに暖められた丘の上で
月は わたしたちのもの
象牙色の樺の林にそっと昇る
夜の癒しの魔法 それはわたしたちのもの
ビロードのように優しくやって来る
曲がりくねった小径は わたしたちのもの
青色に すみれ咲く
ついにはわたしたちのもの
魔法使いが知る 夢が叶うという魔法の国
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春のキーワードが盛りだくさんで、お腹いっぱいになりますね。
というのも、五感を刺激する様々な表現に溢れているからなんです。
まずは、音。
・Hark, I hear a robin calling!「耳をすましてごらん 駒鳥が呼んでいる」
・Every piney glen is ringing/With the maddest roundelays.「松の木茂る渓谷に響くのは/一心に鳴く小鳥の歌」
そして、色。
・And the river’s orient reaches/Are the palest amethyst.「川の東は 見渡すかぎり/薄紫に染まる」
・Ours shall be the moonrise stealing/Through the birches ivory-white;「月は わたしたちのもの/象牙色の樺の林にそっと昇る」
そして、肌触り。
・And the orchard-bloom is falling/Sweet as kisses on the mouth.「果樹園の花は散る/唇にそっと触れる口づけのように」
・Ours shall be the mystic healing/Of the velvet-footed night.「夜の癒しの魔法 それはわたしたちのもの/ビロードのように優しくやって来る
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このように春という宝石が彩られているのは、春の魔法のせいのようです。
なぜなら、the lure of April days「四月の魔力」があり、Springtime lore of daffodils「水仙の春の物語」があり、the mystic healing/Of the velvet-footed night「夜の癒しの魔法」があって、the land where dreams come true「夢が叶うという魔法の国」をつくりあげているからです。
其処此処で、芽吹きを目にしたり、咲き誇る花の香りに包まれたり。
そういう新しく生まれいづるものたちに力をもらって、どんな夢も叶う、そう思えたら、春の魔法にかかっている証拠ですね。
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今回の訳のポイント
ルーシー・モード・モンゴメリーは、美しいフレーズを並べて畳み掛けるような詩が、とても魅力的です。
彼女の春の詩には、「ピクニック」の詩もあって、草花が匂い立つような陽気が感じられる、言葉選びがいつも絶妙です。
そして、何よりもドローンで撮影したかのように、シーンが移り変わって、大地の隅々にまで行き渡る春を伝えています。
とても映像的で、明暗が交互にやってきます。
果樹園(明)→樺の谷(暗)→小川(明)→松の渓谷(暗)→丘(明)→樺の林(暗)→小径(明)と、明暗のギャップが繰り返され、とてもドラマチックです。
映像表現においても、ストーリーテリングにおいても、コントラストは非常に大事ですよね。
その中でも最大のコントラストが、夢と現実。そのギャップに人は胸を焦がすんですね。
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