第11回 仕事の楽しさを忘れそうなときに思い出す詩
仕事でも生活でも、自分のやりたいことだけをできるわけではありません。
そして、わたしたちの生きる時間は限られています。少ない時間をどう充実したものにするか。
日々の仕事や生活を少しでも楽しくしたい、そんなときに思い出す詩があります。
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Haymaking
By Dora Greenwell
Many a long hard-working day
Life brings us! and many an hour of play;
But they never come now together.
Playing at work, and working in play,
As they came to us children among the hay,
In the breath of the warm June weather.
Oft with our little rakes at play,
Making believe at making hay,
With grave and steadfast endeavour;
Caught by an arm, and out of sight
Hurled and hidden, and buried light
In laughter and hay for ever.
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干し草あつめ
ドラ・グリーンウェル
来る日も来る日も仕事に追われる
それが人生!そして楽しいこともある
今やっと一緒になる
遊びのなかの仕事 仕事のなかの遊び
干し草の間を駆け回る子どもたち
暖かな6月のひととき
小さな熊手を振り回し
干し草でも集めましょうか
粛々と そして黙々と働きましょう
腕をつかまれたと思ったら もういない
駆け回ってかくれんぼ ガサガサと
笑い声と干し草に包まれる いつまでも
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干し草集めは、文字通り、猫の手も借りたくなるような総出の作業です。ここで描かれている情景は、大人たちが黙々と作業する中、小さな子どもたちが、干し草の山のまわりで遊びまわっている様子です。
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この詩のハイライトは、Playing at work, and working in play「遊びのなかの仕事 仕事の中の遊び」ではないでしょうか。
遊びの中にも、仕事のように手順や戦略が必要な場合があります。一方、仕事であっても、ときには遊びの要素を加えることで、楽しくしかも効率よくものごとが進むことがあります。
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干し草集めのように辛い作業だからこそ、どうしたら楽しく面白く終わらせられるか、考えてみよう。そんな精神ですね。
「遊び心」の基本は、想像力と溢れるような喜怒哀楽ですよね。ちょっとしたことを大げさに捉えてみるだけで、そこに遊びの要素が生まれます。感謝や成功の喜びをいつもより大げさにしてみるだけで、チームが盛り上がったりしますよね。
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この詩の後半で、子どもたちは小さな熊手で干し草集めの真似事をするように、遊びながらものごとを学んでいきます。
大人にとっては迷惑なことであっても、子どもは真剣に遊んで学びます。「ベビーチェアに座る赤ん坊が、何度言っても、食べ物を下に落とすのは、重力の働きに感動して実験している」というのをどこかで読んで、妙に納得した覚えがあります。
子どもの干し草集めでは片付かないのと同じように、床に食べ物が散らかるのは困りものなのですが。
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辛い作業も遊び心で楽しく乗り切ると言えば、お風呂に入るのを嫌がる子どもを、お風呂場まで連れて行く作業が思い浮かびます。
あるときは、電車や飛行機になってあげて、お風呂場行きの旅に出発したり、またあるときは、お馬さんになってあげて、寄り道して草を食んだり、犬になってはマーキングに忙しくお風呂場になかなか着かなかったり。
無尽蔵にアイディアとパワーが湧いてくるのは、楽しいことには夢中になれるからなんですよね。
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今回の訳のポイント
日本語でも、ひらがながやさしく、漢字熟語が硬く感じるのと同じように、英語にもやわらかい語感と硬い語感があります。
この詩では、硬軟の語を使い分けて、仕事と遊びのパートを対比させています。
全体には平易な言葉であるのに対して、仕事にはWith grave and steadfast endeavour「厳粛かつ確固たる営み」という硬い語をあてて、メリハリをつけていますね。