表記のこと
12月10日付の読売新聞「編集委員が読む」に、「コンマとテン 混在に困惑」というタイトルの記事があった。政府の公用文の読点が、縦書きの時はテン「、」だが、横書きの時はコンマ「,」も多く、しかも横書きの場合にもテンが使われることもあって統一されていないという。同じ省庁内でも異なる場合があるというのだからややこしい。
私が子どもの頃は小学校で、「読点はテン」と教えられたと記憶しているが、今では小学校の教科書でも、政府の公用文に倣って「横書きではテンの代わりにコンマを使うことも多い」となっているそうだ。翻訳者なので、特に書く場合には正しい日本語を使うことを心がけているが、公用文書で使われるものや学校で教える日本語が統一されていないというのも困る。
その記事によると、テンとコンマの使い分けの根拠が、1952年(昭和27年)に国語審議会がまとめた「公用文作成の要領」なのだそうだ。理由は明確にされていないが、どうやら欧文の影響があるのだという。戦後、公用文が横書きになったので、読点はコンマになったらしい。
しかしちょっと考えてみると不思議な話だ。確かに日本語への外来語の影響は強く、カタカナ語もずいぶん増えてはいるが(その是非については別の問題としてよく取り上げられている) 、表記まで外来語を取り入れるのだろうか。スペルを表示したいなどの特定の意図があって原文表記を採用する場合以外、欧文文字を取り混ぜながら日本語を書きはしないので、句点・読点も、縦書きだろうと横書きだろうと、日本語のものでいいと私は思う。
それを言うと、実は「?」「!」「“”」「:」などの記号も、従来は日本語にない記号である。ところが最近は、そんなことはお構いなしに多用する傾向が見られる。さらには、三点リーダ「…」も、中黒「・」を3つ並べたものや、ひどい時には句点「。」を3つ並べてある時も。「…」を2回続けるのが正しいのだが。この傾向は、欧文の影響というよりマンガの影響ではないかな、という気もする。
友人同士の電子メールや個人のブログでなら構わないが、翻訳文やビジネス文書を書く
ときは、この辺りのことに少し気を配ることをお勧めする。そんな「点(テン)」で社会人としての良識を疑われるのもつまらないから。