ボキャブラリーで振り返る2005年
時々、英字新聞や海外の記事の翻訳やサマリーを作成する仕事の依頼を受ける。そんなときに大きな事件があると、普段はあまり目にしたり使用する機会が少ない表現がくり返し使われていて、「ほぅ」と思うことがある。
2005年もあとわずか。そこで、今年とくに気になった事件をボキャブラリーで振り返ってみたい。
seismic scale
インド洋津波が発生したのは実際には2004年12月26日だが、2005年はこの悲しい災害で明けたといっても過言ではないのでは。tsunami は日本語から英語に定着した表現。揺れの大きさを表す「震度」は、seismic scale というが、「震度5強で倒壊」など、日本で私たちが使っている「震度」は、気象庁が独自に定めた10階級からなる「気象庁震度階級」。国際的には別の「震度」があってこちらは12階級。従って、日本の地震を表現するのに気象庁の震度を用いる時は「5 on the Japanese scale」などと表現しなければならない。10月にはパキスタンでマグニチュード(magnitude)7.6の地震が発生し、7万人以上が死亡した。マグニチュードは地震のエネルギーを表す尺度で、リヒターという人が定義したので Richter scale とも言われている。
cordon off
これは、非常線を張ってその場所を封鎖する、という意味。7月7日にロンドンで地下鉄などを狙った同時多発テロが発生したとき、現場がしばらく cordoned off となった。こんな言葉、普段はなかなか使わない。suicide-bombing(自爆テロ)という表現は、米国の9.11の同時多発テロ以後、すっかり市民権を得た(?)けれど。イスラム「過激派」は extremist または militant。こんな表現を目にしないですむ日が早く来てほしい。
levee
8月末に米南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」の被害はあまりにもショッキングだった。levee はルイジアナ州ニューオーリンズで決壊したと報じられた「土手、堤防」のこと。おかげで同市は水没。被災地での death toll (犠牲者数)は合計で1300超となり、Federal Emergency Management Agency(FEMA=米連邦非常事態庁)の不手際が非難され、ブッシュ政権への不信につながった。ハリケーンは1から5までの Category(カテゴリー)に等級化されるというのも日本では馴染みが浅いのでは。カトリーナは最大時で5に達したが、上陸した時は3に落ちていた。今まで5のまま上陸したハリケーンの記録は2つだけとのこと。
fat finger syndrome
今月になってみずほ証券による株式の誤発注が大問題となった。「60万円で1株」が「1円で60万株」と誤って入力された。慌てて訂正を入れようとしたがシステムが動作せず、その間に莫大な金額の windfall profit(棚ボタ利益)をあげた投資家がいるとか。この事件には海外も注目。コンピュータの誤操作が原因の誤発注は以前から fat finger syndrome といわれ、業界では問題になっていたのだ。fat finger とはつまり、キーボードで入力するときに指が太すぎるため意図したもの以外のキーも一緒に押してしまう人、ということらしい。
falsification of earthquake-resistance data
ずばり、「耐震強度偽造」。姉歯元一級建築士(first-class architect)による構造設計(structural design plan)の偽造。衆議院国土交通委員会(the Construction and Transport Committee of the House of Representatives)による参考人 (unsworn witness) 召致への出席を2回拒否した姉歯氏は、証人喚問(testimony under oath)には出席。ここで嘘をつくと偽証罪に問われる(perjury charge)。
さて、スペースの都合上、「10大ニュース」というわけにはいかず、半分の5つだけ取り上げてみた。みなさんも、時にはこんな風に独自の10大ニュースを振り返ってみてはいかがだろう。
次回は新年に。
良いお年をお迎え下さい。