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24時間の平等

the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

かのさん、gattopardo さんと、時間の話が続いて申し訳ないが、私も。

 在宅翻訳を始めた頃、毎日15時間くらいは仕事をしていたように思う。当時は子どももいなかったので、家事や子どもの世話や学校の用事に時間を取られることもなかったし。
 え? 子どもがいなくても家事は必要でしょうって? 
はい、そうなんですが、家事なんつーのは片手間でやろうと思えばなんとでもなる、手を抜けばどこまでも手を抜ける仕事のひとつなんで、歯を磨きながら洗濯物を干すとか、調べものの片手間にパスタを茹でてレタスとプチトマトをさっと洗って晩御飯、なんて調子でOK。掃除をサボって家の中が汚くても死にはしないわよ、くらいの覚悟があれば。

 しかし翻訳って逆に時間をかけようと思えばいくらでもかけられる仕事の1つ。
 たとえば昨日は食品の栄養表示に関するパワーポイント文書を訳していたのだが、fat free と low fat はどう違うのかとか、トランス脂肪っていかなる物質なのかとか、栄養の話での sugar は「糖質」と訳すんだけど実際には炭水化物も含まれるのねとか、sodium ってナトリウムのことなのに、なんで栄養の話では low natrium って表現しないのか、「低塩」という意味で low sodium って表現するけど low salt とはどう違うのか、などなど、辞書に訳語が出ていてそれをそのまま使っても良い場合でも、ついついほじくって調べてしまうのだ。

 ところが子どもがいると、かのさんも述べられるとおり、実働時間が極端に減る。仕方がないので生活時間や睡眠時間や休日を削る。お友達と約束して出かけるなんてまず無理で、土日も仕事が当たり前、平日は子供が保育園に行っている間だけでは仕事が片付かないので、ほぼ毎晩、日付が変わってもPCの前に座っている……なんて生活をしてしまっていた。

 いかんですな、こういう生活は。人間としての生命力が萎えるので。
 最近はまあ、子どもが学齢期に達してくれたということもあるけれど、積極的かつ意識的に仕事以外の時間を作るよう努力している。
 1年半前に始めたテニスはかなり良い効果を発揮しているし。
テニスを通じて新しいお友達ができたり、以前のお友達で疎遠になりかけていた人と復活したり。
 近くに住む友人たちとランチに出るようにもなった。
以前は「いつ仕事の依頼が来るか分からないので約束なんてできないのよー」と言っていた。なに、先にカレンダーに「○月○日、13:00、M子さんとランチ」と書いてしまえば良いのである。後から急に仕事が入っても、その分の時間が仕事に充てられないのを計算してお受けすれば良いのだ。こんな簡単なことに気付くのに何年かかったのだろう。

 先週末の土曜日は、初台のオペラシティでオペレッタの『ウィーン気質』を鑑賞。
 誘ってくれた友人が習う歌の先生の歌手仲間である赤星啓子さんがペピ役で、とても可愛らしくて歌もステキだった。
お金をかけた板張りのコンサートホール(税金の賜物! 利用しない手はない)、他愛もない恋愛ドタバタ・コメディ(小難しいのはダメ)、J・シュトラウス2世の遺作ともなった甘いワルツの数々(この有名な曲、こんなにバカバカしい歌詞だったのね)を聴きながら、ああ、幸せ……。

 どんな人間も、1日に使える時間は平等に24時間。
 これをどう使うか、決めるのは自分。
 幸いにして、在宅翻訳者は自分の裁量で使える時間の割合は多いほうではないかと思う。
 それを仕事に捧げるもよしだが、やっぱりメリハリも大事。
 ともすれば、時間を忘れていつまでも調べものに没頭していたり、訳文のあちこちをいじっていたりする自分にブレーキをかけることも必要だと、ようやく気付き始めた次第である。

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記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

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