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さすが Zidane

the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

サッカーのワールドカップ・ドイツ大会が終わったが、フランスのジネディーヌ・ジダンの一発退場について、ヨーロッパ中がまだまだ騒然としたままのようだ。
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英国のThe Times 紙は、11日付のスポーツ面で
” Read my lips: the taunt that made Zidane snap
Our correspondent finds out what may have caused a great player to lose his head in such spectacular style”
という見出しで、ジダンが自制心を失った (lose his head) 理由、つまり頭突きを食らったイタリアのマテラッツィが何を言ったのかについて、詳しく報道している。また、ジダンがその輝かしいキャリアの中で実は14回も一発退場 (has been sent off) を食らっていること、その回数が悪名高いイギリスのサッカー選手ヴィニー・ジョーンズよりも2回多いことを、時系列順にジダンの退場暦を添えて、ため息混じりに伝えている。
うーん、ヴィニーよりひどいとは。ヴィニーはサッカーを引退した後、ガイ・リッチー監督の『ロック・ストック&ツー・スモーキング・バレルズ』に出演し、以来、コワモテ俳優の道まっしぐらだ。

ところで英語の新聞の見出しって結構好きなのだ。色々な表現や言い回しがあって、結構勉強になる。
たとえば、「レッドカードをもらう」が、the red mist descends という言い方をするらしい。
上記の見出しでも、snap とは面白い言い方だ。昔の「プッツン」、今の「キレる」に通じるものがある。
lose one’s ~ も色んな表現が出来る言葉。lose one’s mind なら「我を忘れる」だし、lose one’s hair は「ハゲる」もあるけど「ひどく心配する」という意味も。lose one’s heart は「恋に落ちる」、lose one’s looks で「容色が衰える」(嫌な言葉!)、lose one’s nerve で「怖気づく」、などなど。
“Read my lips” も、懐かしいフレーズだ。これ、91年ごろにアメリカのパパ・ブッシュ大統領が、国の財政悪化を解消するために増税するのではと噂され、何度も記者たちに同じ質問をされたことに逆切れして発したフレーズだ。
“Read my lips, No new taxes!”
まあ、このシーンがその後何度テレビでくり返し放送されたことか。

話が逸れたが、ジダンが何を言われたかについては、メディア各社が読唇術の専門家を呼ぶなどして分析を試みている。
BBC などによると、マテラッツィは何と、You are a son of a terrorist whore! と言ったらしい。これが本当だとすると、相当ヒドイ侮辱である。ジダンの両親はアルジェリア出身の移民で、ジズー(ジダンの愛称)はマルセイユの貧しい地域で、貧しい家庭に育った。北アフリカとはいえアラブ系の人に「テロリスト」、さらに母親のことを「売春婦」と罵ったのだから、二重の侮辱とも言える。日本人にはピンと来にくいが、アラブ系の人に対してこれは挑発しているといわれても仕方がない部類の発言だ
一方、世界の敵役になりつつあるマテラッツィの方は「テロリストという言葉を使いもしなければ、お母さんについても何も言っていない。私にとって母親とは神聖な存在だから。侮辱したのは認める。しかしそれはピッチではしょっちゅう聞かれる類の言葉だ」と弁解モード。
でもね、"I’m ignorant. I don’t even know what the word means." って、それは言いすぎじゃないの。今の世の中、「テロリスト」という単語を知らない大人がいるとは思えない。この発言で、「あ、コイツは嘘ついてるな」と思ってしまう。
ところでマテラッツィは何語でそれを言ったのだろう。イタリア語? フランス語? 英語?

フランスの各紙も最初は
"A final and odious headbutt. We were left speechless by such stupidity" (フィガロ紙)
"How could this happen to a man like you?" (レキップ紙)
と、驚きと落胆を隠さない調子だったが、マテラッツィの発言内容が報じられ始めるにつれて、ジダンの肩を持つ論調に変わりつつあるらしい。

FIFA もこの騒ぎをほうっておくことは出来ないだろう。
ジダンの頭突きを、その瞬間に主審 (referee) は見ていなかったのに、第4審判 (the fourth official) が主審に報告したため、この第4審判がビデオを再生したのを見て行動したのではないかという非難も起こっているし(サッカーにビデオ判定はない、とFIFA は全面否定)。

それにしても勝っても負けてもファンやメディアを大騒ぎさせるなんて、ジダン、恐るべし。

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記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

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