日米野球に思うこと
先日の3連休中に日米野球を観に行った。
我が家はそれほど野球ファンというわけではないが、メジャーリーガーのプレイを生で観るチャンスはなかなかないと思い、少々お高いチケットだったが入手した。動物園や映画と違って、子ども料金ってないんだなぁ。
東京ドームの入口で、まず厳重なセキュリティチェック。ポケットの中身を全部出し、息子のリュックの中身まで調べられたのには驚いた。さらに探知機でのボディチェックと、ペットボトルの持込が禁止なので、開封していないペットボトルまでわざわざ開けて、紙コップに全部移し替えさせられた。緑茶って紙コップに入れると、巨大な検尿みたい。
……失礼。
とにかく、春に西武球場に行ったときはこんなチェックはなかったし、我が家が観戦した日の始球式は安倍首相ではなく元広島カープの山本浩二氏だったので、きっとMLB選手がいるからだろう。
「MLB式の応援を体験してください」と、入口の中で2本ずつ、空気で膨らますビニールの筒をもらった。拍手の代わりにこれを打ち鳴らすのだ。日本ではお金を出してビーッというゴム風船を買って、途中で飛ばすのだが、それは今回売っていなかった。
それ以外でも、選手の呼び出しも英語だったし、電光掲示板の表示もローマ字/英語、応援席も鳴り物は無しで、すべて「MLB式」。途中で小刻みに入る音楽は We Will Rock You だったり That’s the Way (I Like It)、Young Man などで、これも「MLB式」。
そしてもちろん、7回裏の攻撃に入る前にはあの曲が流れる。
Take Me Out To The Ball Game.
残念ながら観客は大半日本人なので大合唱というわけにはいかなかったけれど、雰囲気は味わえた。簡単なメロディなので8歳の息子は覚えてしまい、帰ってからも口ずさんでいるくらい。親しみやすい歌なのだろう。それともイチローの出ているあのCMで覚えたのか?
この歌、球場で流れる部分以外に前半があったなんて、知らなかった。
翻訳稼業の「調べ癖」のおかげで、またちょっと調べて分かったのだけれど。
Baseball Almanac によると、曲が作られたのは1908年、100年近く前の歌だなんて、スゴイ。でも球場で歌われるようになったのは1971年が最初なんだそうだ。
“…… For it’s one, two, three strikes, you’re out,
At the old ball game”
そういえば、アメリカの Three Strikes You’re Out Law というのが話題になったことがあった。クリントン元大統領が積極的に賛成したので有名になったのだが、カリフォルニアなどの州法で、felony で3回有罪になったら仮釈放なしの終身刑を命じられると定めるものだ。felony とは、死刑または1年以上の長期の刑を科される「重罪」のことをいう。犯罪者の再犯率が高いことと、死刑にならない限り、たとえ終身刑でも仮出獄してはまた犯罪を繰り返すパターンも多いことから、被害者やその家族の感情を反映した法律だと歓迎されたり、逆に犯罪抑止力にはなっていないという批判もある。日本でも特に性犯罪者に対する厳罰化を求める声は強い。
なんてことを考えながら観ていたら、試合は圧倒的なパワーでメジャーの勝利。8対6。
今季58本も本塁打を打ったフィリーズのハワードが2本も本塁打を打った。
MLB側にはホワイトソックスの井口が出場していた。マリナーズの城島はベンチだったけど。日米野球の「米」側に日本人選手。なんとも不思議だけれど、いいなぁと思う。
自分は普段、言葉という手段で人と人がコミュニケーションを取り、理解しあうための手助けを仕事にしていると(理想的には)思っているが、スポーツで理解しあうというのもアリだ。異なる国、文化、民族の人々が、同じスポーツを同じルールで楽しむことで理解しあえる。そこには言葉は不要である。
今日は野球に負けたなぁと思った日であった。