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Eenie meenie minie moe

the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

購読している新聞に先週、「どれにしようかな〜神様の言うとおり〜」の後を、全国でどんな言い方をしているかという話題が載っていた。地方によって言い方が違うなんて思いつきもしなかったが、そういえば、「どれにしようかな〜」ってもう○十年も使っていなかったかも。迷うほどの選択肢が日常生活の中にないってことなのか。それも寂しい。
びっくりしたのは、全国でもっとも多く使われているのが「柿の種」だってこと。
「どれにしようかな〜かみさまのいうとおり〜かきのたね〜」でオシマイ?
えらいあっさりしてへんか。なんやあいそないな〜。
で、自分はどう言っていたかとしばらく考えたがすぐには思い出せなくて、記事の中に「京阪神ではおならの音を連想させる『ぷっとこいて、ぷっとこいて、ぷっぷっぷ』というコミカルなものもある」というくだり見つけ、「そうそう、そうだ、それだった!」と思い出した次第である。それ以外、聞いたことも使ったこともなかった。
そういえば、「どれにしようかな〜」の英語版、"Eenie meenie minie moe" で、おっそろしい話題があった。
アメリカのサウスウェスト航空で、機内の乗客を早く席に着かせようとしたCA(キャビンアテンダント)が、"Eenie meenie minie moe, pick a seat, we gotta go!" と言ったら、「差別的発言で心的苦痛を受けた」と、乗客の中にいたアフリカ系アメリカ人女性2人からサウスウェスト航空が訴えられてしまったのだ。
"Eenie meenie minie moe" には色んなバージョンがあって、それこそ国や地方や年代が違うと異なるらしいが、だいたいこんな感じの唄らしい。
Eenie meenie minie moe,
catch a tiger by its toe,
if he hollers, let him go,
my mother told me to pick the very best one
and you are it!
この「it!」のところで、鬼ごっこの鬼さんなんかを決めるのだけれど、問題は、“tiger” の部分。ここを昔は “ nigger” って言ってたらしい。それってアメリカだけなのかと思ったら、英国人の同世代の友人も「元は nigger だった」と言う。
もちろん、アメリカでは1964年の公民権法で黒人差別が法的に撤廃されているし、この部分は “tiger” ということになって、多くの人がそう覚えていたり使っていたりするらしい。
この歌がいつどこで作られたのか、eenie meenie minie moe の語源は何なのか、実はよく分からないというのが定説。eenie meenie minie moe 自体は、何の意味もないただの音声で、「ぷっとこいて」とたいして変わらないレベル。
それにしても「事件」が起きたのは2001年、裁判はカンサス・シティの地方裁判所で始まって、2005年に控訴裁判所でサウスウェスト航空の勝訴が確定するまで、ばかばかしいほどの時間と費用がかかった。問題のCAさんは一言も、その昔の表現を使ってはいなかったし、Eenie meenie minie moe は今でも子どもたちが普通に使っているものだし、これが何で裁判沙汰になっちゃうのか、さすがアメリカと言うしかない。
いやあ、日本にはそんな 風にpolitical correctness にひっかかっちゃうような「どれにしようかな〜」がなくてよかった。
ただし翻訳をしていると時々、「ここで『黒人』という表現を使ってはならないのか? 『アフリカ系アメリカ人』とするべきなのか?」と悩んだりはする。まあたしかに、我々黄色人種も、他の人種から「イエロー・ピープル」と言われて良い感じはしないかもね。

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記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

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