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休まなくっちゃ

the apple of my eye

通訳・翻訳者リレーブログ

翻訳者と一口に言っても、その仕事の内容、専門分野、働き方など様々だろう。
私はここ10年ほど、ほぼ在宅翻訳一本でやっている。
基本的には、子どもが学校と学童クラブに行ってくれている間に仕事をするという建前で、実情はそれ以外の時間帯にも作業をしていることがほとんど。その実態の一部を先週のこのブログでご披露してしまったが、自分の努力も足りない一方で、夜中や週末に仕事をせざるを得ない状況が存在することも、フリーのビジネス翻訳者ならご存知のはずだ。
ある日の夜9時半ごろ、電話が鳴る。その日は金曜日だった。そんな時間に電話が鳴るというのは、1)実家などの家族・親戚、2)子どもの学校関係、3)親しい友人、のいずれかで、用件は結構緊急かもと思うのが普通で、つい電話を取ってしまった。
Surprise, surprise! とあるクライアントさんだった。
「あのー、月曜日の朝までに仕上がりで25枚ほど、お願いできませんでしょうか。」
もうこの冒頭の「あのー」という、いかにも申し訳なさそうなトーンの一言で、瞬間的に嫌な予感が走るのである。しかし生憎、その週末は子どもがらみの用事と、友人とバレエを観に行く約束で埋まってしまっており、お請けすることができなかった。
こういうとき、私は結構うじうじと引きずってしまう。
あー私が断った後、あの担当者さんは何人の翻訳者に打診しただろう。
無事に誰か見つかったのだろうか。
きっと二足のわらじで週末を中心に仕事を請けていらっしゃる翻訳者さんがいるはずだ。
いや、それにしても金曜日のそんな時間に仕事を依頼し、しかも月曜の朝納品を翻訳会社に要求してくる顧客って何を考えているんだ。
いやいや、無理を承知で依頼してくるんだから、よほど切羽詰っていたのよ。
うーん、そういう人ってきっといつもそんな調子で、もっと早くできたものでもギリギリまで引っ張って、他人を振り回しても結構平気な性格なのかも。
もし翻訳者が1人も見つからなかったら、「こんな納期のお仕事は請けられません!」と翻訳会社から顧客に断ってくれれば、2度とこんなタイミングで仕事を頼もうとはしなくなってくれるんじゃないの。
いやあ、それは営業としては言い辛いな。あとで「他の会社でやってもらいました」って言われたら大ショックだし。
それにしても、担当者さんも遅くまで会社に残って大変だわ。断ってしまって申し訳なかったな。
こんな時間じゃなくてお昼頃に電話をいただいていたら引き受けられたかも。
云々カンヌン……。
こういうことを周囲に言うと、
「あなた以外にも翻訳者なんてたくさんいるんだから大丈夫よ。そんなに何でもかんでも引き受けていたら、いったい自分はいつ休むの」
などと軽くいなされてしまう。で、まったくその通りなのだけれど。
これが別件の仕事で週末が埋まっているのであれば、もう少し堂々とお断りできるのだが、どうも自分が休むのに、折角仕事を依頼しようと電話をかけてくださった方に申し訳ないという気持ちが、うじうじを誘うのだ。
もちろん、翻訳者だって家族もいるし、友人と会う時間も必要だし、休みは当然取らなければ心身ともに続かないのだ。なにしろ小心者でいけませんな。
というわけで、実はもう年末休みに突入している。クリスマスの週末から合わせると正月明けまで2週間近く休めるなんて夢のようだ。あの本も読もう、この映画も見ようと、やりたいことも一杯、あそこに行って、これをして、と。

はい、小心者なので、その休みの言い訳だけに1回分のブログを使いました。
良いお年を。

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記事を書いた人

the apple of my eye

日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中!

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