なんとかならないのか
アメリカから悲しいニュースが飛び込んできた。
バージニアの大学キャンパス内で銃の乱射事件が発生、犯人を含め33人も亡くなったという。学校での乱射事件といえば、1999年にコロラド州のコロンバイン高校で12人が殺された事件が最も記憶に残っているという人が多いと思うが、あれをきっかけに米国での銃規制がやや厳しくなっても、「またか……」という事件が後を絶たない。確か昨年秋にもペンシルバニア州のアーミッシュの小学校で、女の子が5人射殺されたという事件もあった。
会社員時代に渡米して、バージニア、テキサス、ミシシッピ、ニューヨークなどで合計2年間暮らした。その間、知っているようでよく知らないアメリカという国の文化や政治、社会について色々驚くことがあった中でも、この銃の所持の容易さは最も驚いたことの1つだ。銃が関与する事件が発生する度に銃規制についての議論が起こるが、銃所持擁護派が持ち出すのは決まって、合衆国憲法第2修正。
“A well regulated militia being necessary to the security of a free State, the right of the People to keep and bear arms shall not be infringed.”
「武器を所持することは国民の権利であり、侵すべからず」と解釈されるこの条文が、いったい何人の罪もない人を殺したのだろう。
銃規正法で最も有名なブレイディ法(Brady Handgun Violence Prevention Act)が施行されたのが1994年だが、その後も、学校という本来なら銃が関与するはずのない場所で、犠牲になった子どもたちが何人いるか数えるだけで悲しい。
一方で、米国の選挙で大きな争点となることが多い中絶を認めるか否かの問題では、銃支持派と同じ保守派によって「中絶とは胎児を殺すこと」だと主張されるのだから、そのバランス感覚が今ひとつよく分からない。
銃所持擁護派の最大勢力全米ライフル協会(NRA)の広告塔はご存知ハリウッド俳優のチャールトン・ヘストンだ。2003年にアルツハイマー病を理由に辞任するまで5年間も会長を務め、アル・ゴアvs.ジョージ・ブッシュの大統領選では、ゴア候補が銃規制推進派であることを非難して、憲法第2修正の権利を奪うのは、“"from my cold, dead hands”だと叫んだことで有名。年齢がばれるが私などにとってはチャールトン・ヘストンといえば、ユダヤ民族の受難を描いた大作『十戒』と『ベン・ハー』で、悩み苦しむヒーローを演じた姿(リアルタイムでは観ていません!小学生の頃に『〜洋画劇場』でワクワクしながら見た記憶があります)が記憶に焼きついているのだが、そんな彼が「死んでも守ろう」としたのは何の権利だったのだろう……。
実はイギリスのウィリアム王子と恋人の破局報道について書こうと思ったが、このニュースを知ってこちらを書かずにはいられなかった。亡くなった学生さんたちのご冥福を祈りたい。