映画に込められた共通のメッセージとは・・・
「あらゆる映画は、『なぜ私は、今、自分が最も愛する人と一緒に時を過ごしていないのだろう?』という疑問に答えるために作られている」
トム・ハンクスの言葉です。この言葉を耳にしたのは、かつてフランスの高校に通っていた時のこと。フランス語ばかりの生活で英語を忘れないようにと、日本の両親に市販の英語教材を送ってもらっていました。その中のCD教材に、アメリカで人気のInside the Actors Studioという番組の音声を収録したものがありました。映画俳優が出演するトークショーです。あるCDに収録されていたのが、トム・ハンクスのインタビューでした。
当時は特に何も考えずに聞き流していましたが、なぜか心に残る言葉でした。それが最近になって、特に思い出されます。よく考えてみると、コメディー、ホラー、ミステリーなど表現の方法は違っても、ストーリーのどこかにトム・ハンクスの言うテーマが含まれています。明確なラブストーリーではなくても、なぜか日常の雑踏や様々な出来事に心を惑わされ、気付けば最も大切なものを失っている、という姿がどこかに表現されているものです。それは人が「愛」を扱うテーマに惹かれるからなのか(映画監督の立場に立てば、「売れる」ということです)、それともそれは何か深遠な人間のテーマなのか。どんな映画を観ても、例外なく「自分にとって最も大切なものは何なのだろう?」と考えさせられる気がします。
ただ映画と現実世界が違うのは、映画だと最も大切なものが何処からか現れたり、失いかけても最後には手にできること。現実世界だと、最も大切なものを手にしていることに気付かないまま、それをおろそかにして2番目、3番目に大切なものを追いかけ、最終的には1番大切なものだけを失ってしまうことかもしれません。
そんなことを色々考えさせられる秋のボストンです。