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記憶に残った本

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

2005年も終わりに近づき、世間はクリスマスムード、そしてすぐに大晦日ムードです。新聞などのメディアでは「2005年10大ニュース」などが話題になる時期でもあります。そんな中、私が今年読んだ本で記憶に残った本を、短い感想を含めながら数冊紹介したいと思います。

Robert Putnam, "Bowling Alone" (New York: Simon & Schuster, 2000).
「自分の専門分野に関係がある」というだけでなく、題名の面白さにも惹かれて読んでみました。筆者はハーバードの教授で、学術書としても読むことができますが、「アメリカの今」を知るのに非常に役立つ、読みやすい1冊です。多くの日本人が持つアメリカに関する既成概念では、アメリカ人は非常にフレンドリーで、家で友達を招待してパーティーを頻繁に行い、街中では気軽にお互いに挨拶をする、という印象が強いですが、実際にはアメリカ人の人と人のつながりは年々弱くなっているとのこと。教会の出席率から、地域ボーリングリーグの人気まで、色々な社会現象に焦点を当てながら、アメリカ社会がどう変化してきたかを解説しています。知識になって、読み応えのある本としてお勧めです。

John Howard Griffin, "Black Like Me" (New York: A Signet Book, 1996).
元々は1960年に出版された本。白人のジャーナリストである筆者が、1950年代後半のアメリカ南部に黒人として潜入し、人種差別を体験するノンフィクションです。200ページ弱のペーパーバックです。白人として南部で生活した後に薬を使って皮膚を一時的に黒くし(マイケル・ジャクソンの逆ですね)、同じ街で生活をします。皮膚が白かった時に親しく声を掛けてくれた店の主人に無視されたり、バスやトイレの中で差別を受けたり、アメリカ南部で白人、黒人の両方として生活した筆者だけが語ることのできる話で溢れています。1980年に亡くなった時の死因となった皮膚がんが、この皮膚の着色の影響かはわかりませんが、命を張ったストーリーです。

Jodi Picoult, "My Sister’s Keeper" (New York: Washington Square Press, 2004).
白血病と診断された娘を助けるために、両親が作った妹を主人公とした話。生まれた直後から様々な医学的検査を受け、「自分とは何か?」に迷う少女の心を書いたフィクション。弁護士を雇い、自分の姉を助けることを拒否するところから、ストーリーは複雑化します。そして最後には、全く予想しない展開へ・・・

Jared Diamond, "Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies" (New York: Norton, 1999).
400ページ超の本ですが、なぜ白人の文化が大きく発展し、黒人の文化が副次的なものとなったかを、11,000BCまで遡って考えます。アフリカ大陸や南米大陸が南北に長いために、先住民が移住をするのに気象の変化に対応する必要があり、適応化に時間が掛かった話(ユーラシアは東西に長いため、移住しても大きな気候の変化が無い)。遊牧生活と狩猟生活の影響(農具などの機械を発明する必要性の有無)。筆者の意見に賛成するか、しないかは別として、色々な面白いアイデアが詰まっています。

Franklin Foer, "How Soccer Explains the World: An Unlikely Theory of Globalization" (New York: HarperCollins, 2004).
アメリカの文化戦争から、反ユダヤ政策、愛国主義の高揚、中東問題まで、世界を揺るがす問題をサッカーを軸に考えます。サッカーを見れば世界がわかる、といわんばかりの筆者の主張は、なかなか的を得ているようにも思えます。サッカー人気の無いアメリカでは、あまり売れなかったようですが・・・

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Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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