瞬発性と通訳
以前何かの機会に、私の活動範囲(通訳、サッカーの審判、アメリカでの救急救命活動)は「瞬時の判断」という共通分母がある、という事を書きました。通訳については、基本的にそれほど辞書を調べながら訳をする時間的余裕がありませんから、決まった表現や固有名詞は機械的に、そして電子辞書の如く瞬時に訳語が出てこなければなりません。しかし「瞬時」にも違いがあります。「DOG」という単語を耳にして1秒くらい時間をおいて「犬」と言うのも瞬時。単語を耳にすると同時に「犬」というのはもっと瞬時です。通訳の場合、特に同通の場合は後者のような瞬時が求められます。
十分に準備をして望んだ会議が始まり、ブースの中から訳をしていると、「この単語、昨日の夜調べておいてよかった」と思うことが良くあります。しかし「あ、調べたのに、何だっけ?」とほんの一瞬思うことも。1秒もすればすぐに訳は頭に思い浮かびます。しかしそんなことが数回続くと、必然的にパフォーマンスは下降曲線をたどります。「打ったら響く」ほどのテンポのよさがないと、最高のパフォーマンスは出来ないと思います。そんなことを考えていた先日、都内の本屋で時間をつぶしていたらよい練習方法を扱った教材がありました。
その教材はCDに様々な表現が大量に収録されています。英語表現だけで、日本語はゼロ。それもテンポよく、数単語の表現が1秒間隔位で次から次へと読まれます。丁度店頭でそのCDが流されていたので、耳から入ってくる表現を、そのテンポで訳していきました。しかしお恥ずかしいことに、一瞬詰まる表現がいくつかあるのです。しかし詰まっていると次の表現が読まれてしまいます。この様な教材を利用すると、結構実際的な訓練になるかもしれません。
もちろん案件全てに自分で音声を吹き込んだオリジナルCDを作るわけにもいきませんが、受験生時代に単語カードで瞬時に対訳を頭の中に思い浮かべたのと同じ要領で練習することは、結構役に立つかもしれません。もし興味のある方がいらっしゃれば、是非挑戦を!