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フランスの光と影

Hubbub from the Hub

通訳・翻訳者リレーブログ

7月中旬まで通訳などで走り回っていましたが、その後フランスでのバカンスを楽しんでいます。最初は少し仕事もありましたが、その後はフランスの高校へ通っていた当時の友人やホストファミリーに会いながら、楽しい日々を過ごしています。実はフランスへ向かう2日前に日本からボストン入りし、そこからパリ経由でリヨンへ向かったのですが、なんと東京からの荷物がフランスへの出発3時間前まで届かない(ニューヨークの空港で荷物だけ足止めされていたようです)というハプニングがありました。

しかしエールフランスの飛行機に乗ってしまえば、気分はフランス。アメリカ系航空会社では味わうことのできないフランス風機内食の前には、シャンペンのサービス。フライトアテンダントもいつもとは違う雰囲気でした(フランス語の通訳者は、海外出張だといつもこのような感じなのでしょうか?)。

仕事が終わってからは友人の家のプールサイドで読書をしたり、メールをチェックしたり。いつも自宅のオフィスや駅前の喫茶店で急いでメールをチェックしていたのとはまったく違う時の流れ方でした。南仏に住む友人の家を訪ねたときは、3週間のバカンスをマルセイユで楽しむパリの人々であふれていました。また最近はイギリス人もフランスにバケーション用の別宅を購入することが多いようです。

楽しい日々の裏に、フランスの抱える問題を再認識することもありました。昔からアラブ系やイスラム系の人々と、白人の間には様々な問題が存在していました。その緊張が約10年前に住んでいたときと比べて、格段に高まっています。毎年フランスへは訪れていましたが、緊張の高まりをこれほど感じたのは久しぶりでした。W杯でフランスの英雄、ジダンが退場になった件もありましたが、アメリカだけではなく、フランスにも根強い人種問題が存在しています。ある友人の話では、たとえばアルジェリア系フランス人はフランスで生まれているからフランス国籍を持つものの、自分を100%のフランス人と感じることができずにいるといいます。しかしアルジェリアにしてみれば、自国を去ってフランスに身を売った両親の子供を、アルジェリア人と認めることもできないとか。アメリカの有色人種が数十年前に抱えていた問題が、フランスでも起きています。

特に、アジア系アメリカ人の難局と共通する点があるかもしれません。日系アメリカ人であれば、真珠湾攻撃の前に西海岸へ移住して仕事をしていたところ、突然の戦争で日本人でもアメリカ人でもない身分になってしまいました。日本にしてみればアメリカ国籍を持つ日系アメリカ人は敵であり(日系アメリカ人も戦争で戦ったのですから)、しかしアメリカにしてみれば100%信頼することはできない対象でした。アメリカにもまだまだ人種の問題は鬱積していますが、フランスもその後を追っているようです。アメリカが少しずつ状況を好転させてきたように、フランスでも国内情勢が好転するのを望むばかりです。

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Hubbub from the Hub

幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。

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