自主トレ
ニューヨークでは日本にいた頃のようにほぼ毎日通訳の仕事があるわけではないので、自然と現場勘或いは言語勘なるものが鈍っているのを実感します。久しぶりの水泳や自転車と違うし、こればかりは仕方がないです。よく思うのですが、毎日この仕事をしていれば、分野やクライアントが異なったとしても、身体が常に戦闘態勢であることを覚えてくれるのですけどね。
そういうわけで、こちらに来て月に何度か集中的に自主トレなるものを実施しています。そのトレーニングで強力な助っ人はアメリカでは全般的に普及しているオーディオ・ブック。活字好きな私としては音で名作や話題作を聴くことに抵抗があったのですが、教材として使えると感じてからすっかり頼りにしています。なんといっても英語が非常に分かりやすく聴きやすいのがオーディオ・ブックの特徴ですから。
さて、トレーニング方法ですが、聴きながらのシャドーイング。または聴きながらの通訳(逐次、同時)でのアウトプット。どちらの場合も自分の訳出を録音しておきます。その後、自分の訳を聞きながらアウトプットの質をチェックするというプロセスをとります。もし日本語で確認もしたい場合は、日本語の翻訳本が出版された作品を最初から素材として選べば、より論点の理解が深まるかと思います。
想像以上に時間がかかりますが、単に単語レベルではなく、きちんと正しく論説を理解するためにはこの程度の時間は必要でしょう。それに自分の訳出する際の変な癖にも気付くはずなので効果的なトレーニング方法だと思います。
その際に大切なのは教材選びです。今回選んだ素材はノーベル平和賞受賞者のMuhammad Yunus「Banker to the Poor」。1枚1時間強のCDが全部で6枚。一番教材に適した部分のみを集中的に訓練し、その他の部分は料理をしながら聞き流してます。
仕事とその準備時間に追われてアウトプット一辺倒だったころ、底の浅い本当に表面的な知識しかない私は、自分自身がスカスカになってしまう焦燥感をよく持っていました。きっとそんな状態を見るに見かねた神様が少しは時間をじっくり使って知識を深めてインプットに励みなさい!と時間を与えてくれたのかしらと思っています。また次の作品を探さなきゃ…これが一番大変だったりします、はい。