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Le Corsaire (海賊)@ABT

昼顔

通訳・翻訳者リレーブログ

まだ興奮が冷めやらず、違う世界にトリップした陶酔感の中でこのブログを書いています。水曜日はこちらに来てからずっと楽しみにしていたAmerican Ballet Theatreのバレエ「海賊」を観てきました。Metropolitan Opera House(メトロポリタン歌劇場)の正面入口に向かっていると、まず視線をとらえるのはシャガールの大きな壁画。これには一気にテンションが上がり、華やぐ気分を抑え切れません。

私にとっては初ABT。それに今年は45歳で引退を表明したプリンシパルのNina Ananiashviliが演じるMedoraも見逃せるはずがない!ABTのホームページから転載した彼女の美しく優雅な姿をご覧くださいませ。

「海賊」のストーリー展開自体はまぁ荒いといいますか、えっ?と思う結末ですので、この作品では男性ダンサーのダイナミックでアクロバティックな踊りをむしろ堪能するのがベストかと思います。因みにそのABT自慢のイケメン・プリンシパルの中で、昨夜はMarcelo GomesがConradを、そしてその忠実で勇敢な奴隷であるAliにはJose Manuel Carrenoを演じていました。納得の配役!

細かいことを書けばきりがないので詳細は割愛しますが、NinaのMedoraはさすが優雅で美しく、コケティッシュな表情やしぐさに引き込まれてしまいます。彼女だけ別のスポットライトを浴びているみたい。第2幕の見せ場でもあるMedoraとこの男性二人のpas de troisはもう圧巻です。最新の技術で舞台の上だけ気圧が違うんじゃないか?と疑いたくなるぐらい軽やかに舞い、しなやかに飛ぶんですよ、これが!

そのNinaですが、数年前から故郷グルジアの国立バレエ団の芸術監督兼プリマの二束のワラジ(この場合はポワントと言ったほうがいいですね)も履いています。引退後はこちらに専念するのでしょう。彼女がどういう芸術の世界観を構築するのか今から楽しみです。来年にはこのグルジア・バレエ団を引き連れて来日するようですよ。

余談ですが、夫はグルジアの外務大臣。去年8月のロシア−グルジア戦争(南オセチア戦争)は記憶に新しいところですし、今年3月には日本政府からの復興支援続行を求める夫とともにNinaも来日もしていました。グルジアの状況を伝えるニュース報道は最近すっかりなくなってしまいましたね。聞いたところでは、この紛争については国連安保理でも当然議論すべき案件との認識はあるもののその案件名を決める段階での足踏み状態とのこと…いやはや(ご参考まで:ロシアのみがグルジアから分離独立を南オセチアとアブハジア自治共和国に認め、基本的には他の加盟国はその独立自体を認めていないため)。

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記事を書いた人

昼顔

外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。

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