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Closed Caption

昼顔

通訳・翻訳者リレーブログ

日本でもケーブルTV放送で見かけたことがありますが、アメリカでは、聴覚障害者及び難聴の方々も等しく番組を楽しめるようにclosed caption(クローズド・キャプション)なるものが90年代から法制化され、TV受信機にもその放送表示機能を付加することが義務付けられました。

聴覚障害者以外にも、このキャプションは活用範囲が広く大いに利用されています。スポーツ・クラブでも数台のTVが設置され、ジムをしながら放送を目で追う人たちもいました。また、英語の語学習得にも有効なのは想像に難くないです。

キャプションは日本で見慣れている字幕とは、あり方自体が異なります。字幕だと1秒間に把握できる文字数が限定されるので若干の工夫が必要。まぁ、見方を変えれば、この限定条件こそ字幕翻訳者にとって挑み甲斐のある醍醐味のはずです。

キャプションでは、会話はもちろん背景から聞こえてくる単なる音、例えばドアが閉まる音、鳥の囀る声、音楽などの音声がそのまま文字になります。分かりやすくなるからといって、内容の加筆・訂正はしていません。

私はなぜかこのキャプションを見たとき、人間ではなく、機械がアウトプットしていると勝手に思い込んでました。完全な文章になっていないことが多いためなのか、或いは音が全てそのまま文字になっていたために違和感があったからでしょう。ただ、ある意味、人間らしい、打ち間違いや数字の取り違いがあり、調べてみたらこういう職業があると知った次第です。

このキャプショニストになるための訓練って通訳学校での訓練方法と似ているんだろうと推測します。発言内容を落とすことなく把握・記憶するまでは一緒ですから。通訳者はその後、別の言語に聞き手に分かりやすい形でその内容を置き換え、キャプショニストは恐るべき早さでこの内容をタイプするプロセスのはず。アメリカではこのキャプショニストという職は、通訳者、翻訳者と同じカテゴリーに類別され、需要もかなりあるようです。

CMやドラマなどは時差的にキャプションが作成できるので比較的見やすいですが、リアル・タイムのニュースとなると見る側の私はいつもはらはらしてしまいます。ニュースの素材よりも気になるときもあって(笑)、時間との戦いの中で最後まで文字を出せるかどうかを見守ってます。「頑張れ!あと単語2つ」、「あ、数字、打ち間違えてる」と、頼まれてもいないのに、まるでキャプショニストの応援団をしている今日この頃です。

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記事を書いた人

昼顔

外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。

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